最新記事

火星探査

火星探査車「オポチュニティ」が15年にわたる探査を終了 想定寿命の60倍

2019年2月22日(金)14時30分
秋山文野

オポチュニティがエンデュランスクレーターに向かいつつ撮影した自分自身の影。Image credit: NASA/JPL

<こちらも凄い。NASA ジェット推進研究所の火星探査車「オポチュニティ」が先ごろ15年にわたる長い探査を終了した>

2019年2月13日、NASA ジェット推進研究所が開発した火星探査車マーズ・エクスプロレーション・ローバー "オポチュニティ"が想定寿命の60倍という15年にわたる長い探査を終了した。

2018年の夏以来、火星で発生した砂嵐により太陽電池の上に降り積もり、発電量が低下して活動できずにいたと見られ、昨年6月以降は通信できない状態が続いていた。JPLは砂が吹き飛ばされ通信が回復する希望を持って何度も通信を試みたが、ローバーからの応答はなかった。

2003年7月に地球を出発、2004年6月火星に着陸

当初は90火星日の予定だったオポチュニティの探査は、双子のローバーのスピリットが通信途絶となった後も続き、火星の砂に車輪を取られながらも45キロメートルの距離を走破した。その功績はよく「火星表面で水の存在を示す有力な手がかりを見つけた」といわれる。オポチュニティは、その大きな成果を、火星着陸から間もなく成し遂げた幸運なローバーだった。

オポチュニティは双子のローバー、スピリットに続いて2003年7月に地球を出発し、2004年6月24日に火星に着陸した。火星の赤道に近いメリディアニ平原のイーグルクレーターと呼ばれる場所に着陸した(スピリットは別のグセフクレーターに着陸)。探査の大きな目的は、ふたつの着陸地点でかつて火星の表面を水が覆っていた痕跡を探すことだった。

F1.large.jpg記念すべき1火星日目、ナビゲーションカメラから撮影したオポチュニティ自身の一部と火星の表面。先端にパノラマカメラが搭載されたマストが展開される前のもの。Image credit: NASA/JPL

火星の表面に液体の水が存在したことを裏付ける「ブルーベリー」

メリディアニ平原が着陸場所に選ばれた理由とは、火星周回探査機マーズ・グローバル・サーベイヤーの探査によって、この場所が平らな地形でありローバーの探査に向いていること、そしてヘマタイトという形成時に液体の水が関係する鉱物が存在する、と見られていたことによる。

直径約20メートルのイーグルクレーターにチャレンジャー記念基地と名付けられた通信拠点を残し、オポチュニティは移動を開始した。着陸地点周辺にはきめ細かい砂が広がっていたが、10メートル進むと層状の岩石に行き当たり、7火星日目には岩石の上に直径4~6ミリメートルの小さな球状の石を発見。小球は「ブルーベリー」、ブルーベリーが乗っていた岩のくぼみは「ベリーボウル」と呼ばれることになった。ブルーベリーには水の中で作られるヘマタイトやジャロサイト(鉄ミョウバン石)という鉱物を含んでおり、かつて火星の表面に液体の水が存在したことを裏付けるエビデンスとなった。

PIA05634.jpgベリーボウルと呼ばれる岩石 NASA/JPL/Cornell

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中