最新記事

資源

EV普及の鍵握る原材料コバルト コンゴ政権交代がもたらす供給リスクとは

2019年1月20日(日)11時00分

1月14日、コンゴ大統領選で野党候補が勝利し、約20年にわたる汚職にまみれたカビラ政権が幕を閉じることになった。しかし、電気自動車に使われるコバルト業界を覆う霧は晴れない。南部ルアラバで2016年6月撮影(2019年 ロイター/Kenny Katombe)

電気自動車(EV)に使われるコバルトの主要産出国コンゴ民主共和国(旧ザイール)の選挙管理委員会は10日、昨年12月の大統領選で野党・民主社会進歩同盟(UDPS)のチセケディ党首が勝利したと発表。カビラ大統領の後継者、ラマザニ前副首相兼内務・治安相を破ったことで、約20年にわたる汚職にまみれたカビラ政権が幕を閉じることになった。

しかしチセケディ氏は鉱業界では無名の人物である上に、秘密裏にカビラ氏と手を組んで不正に勝利を手に入れたとの憶測も流れ、コバルト業界を覆う霧は晴れない。

資源採掘企業の命運は、新政権の動向に大きく左右されるだろう。マッキンゼーは昨年、コバルトの需要が2025年までに60%増えるとの予想を示すとともに、コンゴ政府の政策の先行き不透明さをコバルトにとっての最大の供給リスクに挙げた。

採掘企業の関係者は「鉱業セクターについては、カビラ政権時代よりも状況が厳しくなるだろう。ある程度は良くなるかもしれないが、期待していない」と話した。

選管の発表にチセケディ陣営は沸いた。しかしすぐに選挙結果に疑いが浮上した上、カビラ氏が広い人脈を駆使して経済への影響力を維持する可能性も残る。

ニューヨーク大学コンゴ研究グループのディレクター、ジェーソン・スターンズ氏は「極めて不安定な状況になるだろう。賢明な投資家なら今後半年間は様子見をみるべきだ」と述べた。

チセケディ氏は投資家の判断材料となる政界での実績が乏しい。

ある業界筋によると、チセケディ氏の勝利を見込んでいた企業はほとんどなく、別の野党候補で有力な鉱業州の前州知事に近いファユル氏に関心が集まっていた。鉱業関連企業の間では、こうした戦略を取ったためにチセケディ氏との関係が悪化するのではないかとの危惧が広がっているという。

チセケディ氏が率いるUDPSは以前から鉱業分野で国が重要な役割を担うべきだとの立場を取り、州政府資産の民営化に反対してきた。しかしチセケディ氏は今回の大統領選では、昨年導入された鉱業規約の見直しを示唆し、業界寄りの姿勢をみせた。規約は幅広い税率を引き上げるもので、業界と政府の関係は最悪になっていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

サウジ、JPモルガン債券指数に採用 50億ドル流入

ワールド

サウジとパキスタン、相互防衛協定を締結

ワールド

日経平均は反発、終値で初の4万5000円台 半導体

ビジネス

野村、年内あと2回の米利下げ予想 FOMC受け10
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中