最新記事

中台関係

中国による台湾の武力統一、「あと5年は無理」

Xi Jinping Tells Chinese Army To Be Ready For Battle

2019年1月7日(月)16時30分
クリスティーナ・チャオ

1月2日、台湾統一を呼びかける習近平国家主席 Mark Schiefelbein-REUTERS

<習近平は、台湾の武力統一も辞さずと軍に「戦闘準備」の号令をかけたが>

中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は1月4日の中央軍事委員会で、人民解放軍に対し軍事闘争への準備を命じた。一方で台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統は、中国からの統一圧力が高まる中、台湾の民主主義を守るため国際社会の支援を呼びかけた。

サウスチャイナ・モーニングポストによれば習は全軍に対し、「国の安全保障と発展の大勢を正確に理解し、予測できない苦難や危機、戦いに対する意識を高めなければならない」と述べたという。

「(中国は)新たな出発点から軍の総合的な闘いに備えなければならない......非常時における効果的な対応を確実にするため、戦争と戦闘への備えを深めなければならない」と習は述べた。

習は2日にも台湾政策に関する演説を行い、台湾は中国の一部であると断言するとともに、中台統一を進めようと台湾に呼びかけた。また、中国には台湾を支配下に置くための武力行使の権利があるとの立場を改めて示した。

人民解放軍の上陸作戦を想定した台湾軍の演習

「次に侵略されるのはどの民主国家か」

台湾の蔡は習の演説を非難するとともに、習の「一国二制度」の提案を拒絶した。蔡は台北で記者団に対し、「国際社会はこれを深刻に受け止めるとともに、台湾への支持の声を上げて力を貸してもらいたい」と語った。また蔡は、強い脅威にさらされた民主国家が国際社会からの支援を受けられないという事態になれば、「次はどの国(が侵略されるの)かと問わなければならなくなるだろう」と述べた。

昨年3月の全国人民代表大会でも、習は今回と同様の考えを明らかにしている。習はこの時、中国からの分離を求める者は「失敗する運命にあり」、「歴史の罰」を受けることになると台湾を牽制した。

中国政府の指導者たちは建国以来約70年にわたり、台湾の統一を将来達成すべき課題として扱ってきた。だが台湾政府は中国共産党の支配下に入ることにまったく関心を示していない。

2016年に独立志向の民進党から出馬した蔡が総統選挙で当選して以来、中国の台湾に対する敵対的な姿勢は強まっている。中国はこれまで、中台統一のための武力行使を放棄したことは一度もない。

台湾周辺での中国の軍事演習により武力行使への懸念は高まっている。だがロンドン大学東洋アフリカ学院中国研究所のスティーブ・ツァン所長は本誌に対し、アメリカの介入を避けるためにトランプ政権との交渉が行われない限り、人民解放軍が台湾に軍事攻撃を仕掛けることはないだろうと述べた。

「あと5年ぐらいは、(アメリカの反対を押し切ってまで)台湾に武力行使する力は中国にはないだろう。もしやれば、侵略の過程で前線と先進的な装備、軍隊の大半を失いかねない」

(翻訳:村井裕美)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

COP30が閉幕、災害対策資金3倍に 脱化石燃料に

ワールド

G20首脳会議が開幕、米国抜きで首脳宣言採択 トラ

ワールド

アングル:富の世襲続くイタリア、低い相続税が「特権

ワールド

アングル:石炭依存の東南アジア、長期電力購入契約が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中