最新記事

株式

米株価乱高下続きの今年、成功した投資戦略とは?

2018年12月28日(金)12時00分

12月26日、米株式市場はこの10年間ほぼ無風状態が続き、動揺しても一過性だったため、ボラティリティに連動する金融商品に投資して利益を上げるには、タイミングを見定める手腕が欠かせなかった。NY証券取引所で撮影(2018年 ロイター/Jeenah Moon)

米株式市場はこの10年間ほぼ無風状態が続き、動揺しても一過性だったため、ボラティリティに連動する金融商品に投資して利益を上げるには、タイミングを見定める手腕が欠かせなかった。

しかし今年は様相が一変した。相場の乱高下が続いてボラティリティ関連市場が活気付き、こうした金融商品を買って保有し続けていれば簡単に利益が手に入った。

S&P総合500種指数は過去3カ月間の下落率が19%と、先の世界金融危機以来の大幅な下げとなり、今年初めに危険を冒してボラティリティに連動する金融商品に投資したトレーダーは70%を超える利益を得た。

タイフォン・キャピタルの共同ヘッド、マット・トンプソン氏は「今年のボラティリティ連動商品市場では単純な『バイ・アンド・ホールド』という、ほとんどの場合は機能しない投資戦略がうまくいった」と述べた。

ボラティリティは通常、株式相場が下げると上昇するため、ボラティリティ連動商品の購入は一種の保険だ。ただ、他の保険商品と同様にコストを伴う。

ヘッジファンドのパープラス・パートナーズのジム・カーニー最高経営責任者(CEO)は「ボラティリティ関連商品の保有には大きなコストが付随するのが普通だ」と述べた。

オプションや先物、上場投資証券(ETN)などボラティリティ関連商品の大半は、株式相場が落ち着いたり上昇したりすれば、急速に価値を失う。しかしカーニー氏によると、今年は日々の値動きが大きい状態がいつまでも続き、数年ぶりにボラティリティ関連商品の投資がリターンを産んだという。

例えばシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ・インデックス(VIX指数)に連動する「iPath・S&P500・VIX・短期先物・ETN(VXX.P)(VXX)」は、今年の上昇率が約72%となった。

VXXは1カ月物と2カ月物の2本のVIX先物を組み合わせており、満期が来ると1カ月物を売って2カ月物を買い、これを繰り返す。

パープラスのカーニー氏によると、VIX先物で1カ月物の価格が2カ月物を下回る場合、VXXの保有には膨大なコストが生じるが、足元では1カ月物が2カ月物とほとんど同じ価格か、もしくは上回っており、コストが発生しないという。

VXXは通常、価格の安い1カ月物を売って価格の高い2カ月物を買い続けるため、常に価値が減っていく。2009年にVXXに10万ドル投資していれば、現在の評価額は約40ドルとなっている計算だ。

しかし今のように市場がストレスにさらされている場合、期近物が期先物よりも価格が高くなり、VXXは活気付く。VXXは今年、ほぼ10年ぶりにプラス圏で年を終える見通しだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、イラン・イスラエル和平を楽観視 プーチ

ワールド

ネタニヤフ氏、イランの体制崩壊も視野 「脅威取り除

ワールド

トランプ氏、イスラエルとイランの停戦合意を期待

ビジネス

仏ルノーCEOが退任へ、グッチ所有企業のトップに
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中