最新記事

中国社会

「中国発展の代償は我われの命」 経済成長支え使い捨てられた出稼ぎ労働者の嘆き

2018年12月24日(月)10時42分

深センの成長

労働者の健康被害は中国に限った話ではない。米国の支援団体も、こうした「粉じん由来の疾病」で亡くなる労働者に対する補償を求めて、数十年にわたる闘いを繰り広げている。

とはいえ、中国の建設ブームはあまりにもペースが速く、わずか40年間で、前例ないほど多数の犠牲者を生み出してきた。

深センほど急速に成長した都市は過去にない。同市の経済生産は昨年初めて、近隣の香港を追い越した。

深センでは、32路線で構成される世界最大の地下鉄網が2030年までに整備される予定だと国営英字紙チャイナ・デイリーは報じている。

深センを北京や香港と結ぶ北部の鉄道駅から世界第4位の高さを誇る高層ビル「平安国際金融中心」に至る、市内にある多くの有名建築の大半は、他省から流入した出稼ぎ労働者によって整備された。

巨大都市の成功の裏で、労働者たちは、医療費や子どもの教育費などを支払うために、もっぱら高利の銀行融資や親族・友人からの借金に頼らざるを得ない状況だ。

Wangさんは通院費を払うために地方の金融協同組合から5万元借りた。融資契約によれば、金利は4半期ごとに11.27%だ。

「子どもたちが連帯保証人なので、銀行もまだ金を貸してくれる。息子は、私が死んだら銀行への返済を肩代わりすることに同意した」。ベッド脇の炭火で自家製のサツマイモを炙りながら、Wangさんはそう語った。

珪肺と診断された2009年に、深セン市当局は13万元を支給したが、それでは十分ではなかったと彼は言う。

「中国では、問題は金が足りないことではない」と香港大学で社会学を研究するPun Ngai教授は言う。「深セン市には巨額の社会保険基金がある。問題はイデオロギーだ」

「深セン市政府は、こうした労働者は深セン市の住民ではなく、従って自分たちの責任ではないと考えている」と同教授は指摘。「市政府は、もしこの労働者たちの要求を受け入れれば、他省から他の人々が補償を求めてやってくると懸念している」

深セン市の公式人口は1250万人で、社会保障基金の総額は2017年末時点で5400億元以上に達している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は反落、FRB理事解任発表後の円高を

ビジネス

トランプ氏、クックFRB理事を異例の解任 住宅ロー

ビジネス

ファンダメンタルズ反映し安定推移重要、為替市場の動

ワールド

トランプ米政権、前政権の風力発電事業承認を取り消し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 2
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 7
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中