最新記事

米中関係

米中対立はむしろ「熱戦」

2018年11月28日(水)11時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

遠くて近く、近くて遠い、トランプ大統領と習近平国家主席  Jonathan Ernst-REUTERS

トランプ大統領が対中関税を25%に引き上げる意向だ。となれば中国に製造工場を持つアップルなどは打撃を受ける。また米議会は中国の対米投資を厳格化はしたが、対中投資する米企業への報復を避けて抑制的だ。米中の相互作用を考察する。

中国製品に対する関税を10%から25%に

トランプ大統領は11月26日、2000億ドル相当の中国製品に対する関税を10%から25%に引き上げるとの見通しを示したと、ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。

それによれば、関税率の引き上げは来年1月1日から実施するようだが、もし中国との協議で合意できなければ、中国からの残り全ての輸入品についても関税発動に踏み切ると発言しているとのこと。

そのような中にあっても、今月末アルゼンチンで開催されるG20(20ヵ国・地域)首脳会議で、習近平国家主席と会談したい旨をトランプ大統領は1カ月ほど前に中国側に伝えている。

中国企業の対米投資制限に関して

トランプ大統領は、「中国がアメリカ企業買収やアメリカ企業への投資によってアメリカの知的財産を侵害している」として、中国の米企業買収や対米投資を阻止するための法案を議会で通そうとしていた。しかし、結果的に中国だけを狙い撃ちせずに、どの国に対しても適用される「対米外国投資委員会(Committee on Foreign Investment in the United States。以下、CFIUS)」の権力強化に留めている。CFIUSは「外国から米国への投資に対する国家安全保障の確保を目的とした審査を行う委員会」で、この「外国」は中国に限らず、日本を含めた全ての外国を対象としている。

今年8月13日、トランプ大統領は、CFIUSによる審査制度等に大きな変更を加える「2018年外国投資リスク審査近代化法(Foreign Investment Risk Review Modernization Act)」に署名し、同法が成立した。この「外国」には、日本も含まれる可能性だってある。

なぜこのような遠回りなことをしたかというと、中国だけを狙い撃つと、中国でビジネス展開をしているアメリカ企業が中国から締め出されるという報復を受ける可能性があるからだ。それほどに、中国とアメリカは互いに深く、広く、複雑に食い込んでいる。

清華大学経済管理学院顧問委員会の米投資ファンドCEOたち

何度も例にとって申し訳ないが、習近平の母校の清華大学経済管理学院には数十名の米大財閥が顔を揃えている。習近平は必要に応じて日頃から顧問委員会委員と連携を取っており、年に1回は総会を開く。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:アマゾン熱帯雨林は生き残れるか、「人工干

ワールド

アングル:欧州最大のギャンブル市場イタリア、税収増

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 10
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中