最新記事

中南米

ブラジル次期外相「地球温暖化は陰謀だ」──アマゾンもセックスも危ない

Climate Change a Globalist Plot: Brazil Minister

2018年11月19日(月)16時12分
デービッド・ブレナン

「ブラジルのトランプ」ボルソナロが大統領選挙に勝利して、予想通りの右旋回が始まった Adriano Machado-REUTERS

<トランプ信奉者で極右の次期大統領と閣僚たちに、環境団体や人権団体は不安をつのらせている>

地球温暖化は、中国が経済で西側を追い抜き、伝統文化を破壊するのを助けるための「グローバル主義者」の陰謀だ──ブラジルの新外相はそう信じているらしい。

10月の選挙で当選したブラジルのジャイル・ボルソナロ次期大統領は11月14日、エルネスト・アラウジョ(51)を外相に指名した。アラウジョの右翼イデオロギーには批判も多く、陰謀論を信じていることでも有名だ。主要閣僚に指名されても、軟化する気配はほとんど見られない。

英ガーディアン紙によれば、アラウジョは気候変動の科学的根拠は単なる「ドグマ」だと主張し、「グローバル主義的イデオロギーからブラジルと世界が解放されるよう支援する」ことが自分の目標だと述べたという。「グローバル主義的イデオロギー」は本質的にキリスト教と相容れないというのが彼の考えだ。

アラウジョと同様に、ボルソナロも環境保護より天然資源の開発に関心を持っているようだ。世界最大かつ最も生物多様性に富むアマゾンの熱帯雨林についても変わらない。

ボルソナロは自身と同じような考え方の閣僚で周りを固めているため、気候変動を憂う活動家らは気の休まらない日々を送っている。

アラウジョは10月、個人のブログで、気候変動は「経済に対する国家の規制の力、そして国民国家とその国民に対する国際機関の強制力を正当化するため、また、民主的な資本主義国家の経済成長を抑圧し、中国の成長を促進するために使われてきた」と書いた。

根拠のないトンデモ主張をブログで展開

グローバリズムをおとしめるような言説は極右のイデオロギーを支える重要な柱であり、世界中どこに行っても変わらない。アメリカのドナルド・トランプ大統領や多くのオルタナ右翼の発言を見ればそれはよく分かるだろう。ユダヤ系団体の名誉毀損防止連盟(ADL)によれば、こうした表現は以前から、ユダヤ人を中傷する意図でもよく使われてきたという。

環境団体「ブラジル気候観測所」のカルロス・リッティ事務局長はアラウジョの外相指名について、気候変動との闘いや環境保護においてブラジルが果たしてきた大きな役割を考えると、「もし彼が自身のイデオロギーを持ち込むなら、非常にまずいことになるだろう」と述べた。

アラウジョはブログで「マルクス主義者の知識人」やブラジルの中道左派の労働党は「すべての異性間の性行為はレイプであり、すべての赤ん坊は二酸化炭素の新たな排出源だから地球にとってのリスク要因だと言って、セックスと生殖を犯罪扱いしている」などと主張。労働党は赤身肉や油、エアコンやディズニー映画も非合法化しようとしているとまで匂わせた。ちなみにいずれの主張も証拠はまったく示されていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調

ビジネス

米フォード、4月の米国販売は16%増 EVは急減
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中