最新記事

アメリカ政治

米中間選挙の民意を出口調査から読み解く

The GOP Is Losing the Middle

2018年11月17日(土)15時15分
ウィリアム・サレタン

有権者は何を重視して投票したか Michael Brochstein Images-LIghtrocket/GETTY IMAGES

<移民問題でトランプは票を掘り起こしたが、長期的に見れば中道派の共和党離れを招く>

選挙が終わると、人はパニックを起こし、あるいは月並みな総括をし、あるいは恣意的な解釈で自画自賛する。ドナルド・トランプ米大統領は自分のおかげで共和党の選挙戦は大成功だったと吹聴し、全米ライフル協会(NRA)は銃規制推進派をやっつけたと言い張る。左派は人種差別の拡大を懸念し、右派は巻き返しに成功したと自慢する。そして誰もが、この選挙結果は自分たちの主張の正しさを証明していると豪語する。

その言い分のどれが正しく、どれが間違いかを判別する材料がある。出口調査だ。エジソンリサーチ(米3大テレビネットワークおよびCNN)とNORC(AP通信とFOXニュース)の出口調査データを総合すれば、有権者が何を重視して投票したか、そして共和党の抱える真の問題は何かが分かる。

共和党の「戦犯」はトランプ

トランプは自分が共和党を救ったと言うが、それは違う。投票行動に「トランプは関係なし」と答えた人の間では共和党の楽勝だった。だが「関係あり」と答えた人で見ると、民主党候補に投票した人が共和党候補に投票した人よりも15~20ポイントほど多かった。

トランプの仕事ぶりや人柄に不満を抱く人の割合は全体の半数を超えており、強い悪感情を抱く人も45%前後いた。「トランプを応援するため」に投票したと答えた人は全体の25%で、「トランプに反対するため」に投票した人は37.5%だった。

経済以外の全ての面で不支持が支持を上回った。トランプは「不正直で信頼できない」が「正直で信頼できる」を26ポイントも上回り、大統領は「一般国民に関心なし」が「関心あり」を17ポイント上回った。気質的に大統領に「適していない」が「適している」を29ポイント上回り、過半数がトランプ政権は「前政権より倫理的に劣る」と答え、「前政権より倫理的」との回答は4分の1にすぎなかった。

トランプお得意の論点に関する評判も芳しくない。国境警備政策への賛否は五分五分で、過半数が強い指導者とは言えないと回答。治安は以前より悪化したとの回答(35%)が改善したとの回答(27%)を上回った。

キャバノー効果はなし

共和党の言う「キャバノーによる支持率押し上げ効果」は、実は人々の関心がトランプから一時的に離れたことによる揺り戻しだった。ブレット・キャバノーの最高裁判事指名については反対(47%)が賛成(43%)をやや上回った。キャバノー支持派だけで見れば共和党への票が断然多いが、反対派は圧倒的に民主党候補に投票していた。

全体の25%がキャバノー問題を重視しないと答え、その層では共和党が勝っていた。だが、ある程度重視した人の中では共和党は若干負けていた。半数近くがキャバノー問題を非常に重視し、そこでは共和党が民主党に13ポイントも水をあけられた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

緩和の出口戦略含め、財政配慮で曲げることはない=内

ワールド

習首席が米へのレアアース輸出に合意、トランプ大統領

ビジネス

アングル:中国製電子たばこに関税直撃、米国への輸入

ワールド

日米関税協議、「一致点見いだせていない」と赤沢氏 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 2
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット騒然の「食パン座り」
  • 3
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが、今どきの高齢女性の姿
  • 4
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 5
    脳内スイッチを入れる「ドーパミン習慣」とは?...「…
  • 6
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 7
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    壁に「巨大な穴」が...ペットカメラが記録した「犯行…
  • 10
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 4
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 5
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 6
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 10
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 7
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 8
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 9
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中