最新記事

歴史問題

徴用工判決が新たな火種に 行き詰まる日韓関係

2018年11月4日(日)18時01分

10月31日、韓国最高裁が元徴用工に対する賠償を日本企業に命じたことで、強硬化する世論や歴史観の違いに直面している日韓両政府は、事態が両国関係の危機に発展しないよう慎重に対応する構えだ。2015年6月、東京で撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

韓国最高裁が元徴用工に対する賠償を日本企業に命じたことで、強硬化する世論や歴史観の違いに直面している日韓両政府は、事態が両国関係の危機に発展しないよう慎重に対応する構えだ。

韓国最高裁は30日、植民地時代に「徴用工として日本で強制的に働かされた」と主張する韓国人4人が新日鉄住金<5401.T>に損害賠償を求めた訴訟で、同社に賠償を命じる判決を下した。

日本政府は「あり得ない判断」だと反発する一方で、北朝鮮問題における日韓協力に影響が出ないよう期待を表明した。

韓国外務省によると、韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相と河野太郎外相は31日に行われた電話会談で、「未来志向の両国関係の発展」に向けた協力を継続する重要性を確認した。

日韓両国は、北朝鮮による核・ミサイル開発を抑制するために協力する必要があるほか、緊密な経済関係にある。韓国の統計によると、日本企業は昨年、韓国に18億4000万ドル(約2080億円)を投資しており、韓国にとって第2位の海外投資国となっている。

だが両国の関係は、日本による朝鮮半島の植民地支配(1910─45年)や戦争、そして従軍慰安婦の問題で、長年揺れてきた。

「両国ともに、歩み寄る気持ちが不足している」と、テンプル大学日本校アジア研究学科ディレクターのジェフリー・キングストン教授は指摘する。「基本的に、政治的な立場を超えて、韓国人は過去の傷に対する日本の対応が不適切だと感じている」

「日本は、法的に解決済みだと考えており、(他の企業に対する)請求のパンドラの箱を開くことになるため、柔軟性を示すことには消極的だ」と、キングストン氏は分析する。

三菱重工業<7011.T>や三井金属鉱業<5706.T>などを相手取った似たような訴訟が14件起こされており、うち2件は、原告が752人に上る集団訴訟だ。

韓国側は、戦時中の強制労働被害者は15万人近くに上ると主張しており、そのうち約5000人が存命だが、徴用工の遺族も訴訟の原告になることが可能だ。

日本側は国際裁判も視野に入れていると述べているが、河野外相は文在寅(ムン・ジェイン)政権の出方を待つ考えを記者団に示した。

「われわれは、次の行動を模索し始めたところだ。首相の下に、民間専門家も含めたタスクフォースが設置される」と韓国政府の当局者はロイターに語り、「非常に難しいが、影響を最小にとどめるような賢明な対応を考えなければならない」と付け加えた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米財政赤字、今後10年でさらに拡大 減税・移民減少

ビジネス

アックマン氏のファンドが昨年終盤メタ株購入、ヒルト

ワールド

カナダ中銀1月会合要旨、FRB独立性巡る協議が世界

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、雇用統計受け利下げ観測後退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 6
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 7
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 8
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 9
    まさに「灯台下暗し」...九州大学の研究チームが「大…
  • 10
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中