最新記事

APEC

APEC閉会したパプアで軍兵士や警察官ら300人が国会襲撃! 目的は警備手当の支払い

2018年11月21日(水)21時43分
大塚智彦(PanAsiaNews)

APECの警備を担当した軍兵士や警察官が警備特別手当の即時支払いを要求して国会を襲撃した  ABC News (Australia) / YouTube

<米中が通商政策で対立、史上初めて首脳宣言を採択することなく閉幕した今年のAPEC。開催地のパプアニューギニアでは閉幕後も混乱が続いた>

11月17〜18日に「アジア太平洋経済協力会議(APEC)」を開催したパプアニューギニアの首都ポートモレスビーで20日、APEC期間中に警備の任に当たった同国の警察官や軍兵士が国会議事堂に押しかけ、ガラスを破るなどして乱入する騒ぎを起こした。

政府が支払いを約束したAPEC警備特別手当「350キナ(約104米ドル)」が予算不足から減額される可能性が伝えられたことや一部で支払われないとの噂が流れたことが原因とされ、警察官や兵士約300人が「警備特別手当の即時支払い」を要求して警察長官と面会したものの、納得できる回答が得られなかったため、国会に大挙して押しかけたという。

現地からの様子を伝える地元紙やオーストラリアのテレビ局などによると、国会前の道路には数百人の警察官と兵士が集まり、道路を封鎖する一方で、ガラスを破壊して国会内部に乱入、国会警備を脅しす一方で国会の備品や家具を破壊した。乱入当時国会内には閣僚や議員などがいたというが、これまでのところ負傷者などは報告されていないという。

警察官や兵士はピーター・オニール首相との面会を求めたものの、面会は実現しなかったという。

パプアとして初の大規模国際会議主催

東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国や日米中など21の国や地域の首脳クラスが参加して行われたAPECは、加盟国内で最貧国とされるパプアニューギニアにとって初めて大規模国際会議のホストを務める一大イベントだった。

ポートモレスビー市内には各国の代表団やメディアを収容する宿泊施設が絶対的に不足していたため、大型客船を手配して国際会議場の近くに停泊させ、そこを宿泊施設に当てることで乗り切った。

主会場となった国際会議場に参加首脳が乗りつける高級乗用車も絶対数が不足していたため、政府は1台約15万ドル(約1700万円)もするイタリア製マセラッティを40台、急きょ購入して対応した。

こうしたAPEC開催のために多額の費用が支払われたことに対し、貧困にあえぐ一般市民や低賃金待遇の警察官、兵士が政府への不満を高めていたことも国会乱入の背景にあるとも指摘されている。

さらに路上強盗や窃盗、暴力行為が日常茶飯事といわれ、域内で最も治安が悪い首都とされるポートモレスビーだけに、APEC期間中の治安維持には自国の警察、軍だけではなく、APEC参加国でもある近隣のオーストラリアやニュージーランドから約2000人の兵士が応援に駆けつけ警戒警備に当たった。

国際会議場周辺にはオーストラリア、ニュージーランド両国軍の兵士を加えた大規模な警備態勢が敷かれ、海上や上空を警戒する船舶やヘリコプターがものものしく動き回っていたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧州、ウクライナ和平巡る協議継続 15日にベルリン

ビジネス

ECB、成長見通し引き上げの可能性 貿易摩擦に耐性

ワールド

英独仏首脳がトランプ氏と電話会談、ウクライナ和平案

ビジネス

カナダ中銀、金利据え置き 「経済は米関税にも耐性示
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲う「最強クラス」サイクロン、被害の実態とは?
  • 4
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 9
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 10
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中