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加入者が1日100万人?──アリババ会員向け重大疾病保障とは?

2018年11月12日(月)19時00分
片山ゆき(ニッセイ基礎研究所)

そのような懸念はあるものの、短期間で加入者を急増させた手法については、従前のオンラインMMFである「余額宝」の販売手法が想起される5。ニーズが高い金融分野において、コストが割安なオンライン金融商品として提供し、アリペイという決済口座を活用して一気に販売するという手法である。今般は医療保障という点から、アリ会員(使用頻度)、ゴマスコア(信用偏差値)といった、独自に蓄積、分析した指標や信用情報も活用している。主務官庁による各種規制が追いついていないことも大きいが、これまでの「保険」や「相互保険」の定義の枠組を超えた新たな保障のあり方を示したともいえよう。

アリババグループは、アントフィナンシャルを中心に、ネット専業損保の衆安保険、損保の国泰財産保険の筆頭株主となっている。また、2017年に生保相互保険である信美人寿へ資金を拠出したことによって、生損保の両分野に進出をしている。膨大な数のユーザーの保険ニーズと金融ビッグデータをアリババ経済圏内にどう留めておくか、巨大なプラットフォーマーによる保険分野への進出は、保険そのもののあり方を再定義する勢いで進む様相を呈している。

――――――――

5 余額宝は、アリペイの決済口座の少額残高を活用したオンライン金融商品。1元から投資を可能にし、若年層や中間所得層などそれまで金融商品への投資に二の足を踏んでいた層の取り込みに成功し、一気に普及した。

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポートからの転載です。

0218katagyama.jpg[執筆者]
片山ゆき
ニッセイ基礎研究所
保険研究部准主任研究員・
ヘルスケアリサーチセンター兼任

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