最新記事

移民

アメリカで移民危機が勃発? トランプの危険な中間選挙戦略

Migrant Caravan Swells to 7,000 Asylum Seekers

2018年10月23日(火)16時10分
ジェイソン・ルミエール

グアテマラからメキシコに入り、アメリカを目指すキャラバン Ueslei Marcelino-REUTERS

<中米の貧しい国々から、アメリカを目指して誰ともなく歩き始めた移民キャラバンが、7000人に膨らんだ。トランプは移民を貶め、米軍に国境を守らせると危険な兆候を見せる>

ドナルド・トランプ米大統領は10月22日、中米からメキシコを通過して、アメリカ南部の国境に向かっている移民の集団(キャラバン)に、「数えきれないほどの中東出身者」が紛れ込んでいると、何の証拠もないツイートをした。

「残念なことに、メキシコの警察や軍は、アメリカ南部の国境に向かっているキャラバンを制止できないようだ。そのなかには、犯罪者や数えきれないほどの中東出身者が紛れ込んでいる」と述べた。「これは国家の非常事態であり、国境警備隊や軍に警戒するよう指示した。法律を変えなくてはならない!」

だがトランプは、中米からの移民のなかに中東出身者や犯罪者が混ざっていることを裏づける根拠を示していない。それが「国家的な非常事態」になる理由も説明していない。


キャラバンは民主党が仕組んだ

トランプは、グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルがキャラバンの進行を阻止できなかった罰として、援助を停止、または大幅に削減すると言う。

「グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルは、自国を出てアメリカに不法入国しようとしている人々を阻止する責任を果たせなかった。それらの国々に出してきた多額の援助は今後、停止するか大幅に削減する」

だが、キャラバンが通ってきたグアテアマラやメキシコでは、警察も催涙ガスや発煙筒を使って移民を追い返そうとし、小競り合いも度々起こっている。なぜそれでも前に進むのか。「仕事がない」「未来がない」と移民たちは訴える。

グアテマラとメキシコを繋ぐ国境の橋に「収容」された移民たち。川に下りてメキシコに渡った者も


中米を北上するキャラバンの人数は10月22日までには約7000人に膨らんで、さらに増え続ける見込みだ。

トランプはこのキャラバンは、民主党の責任だと繰り返しツイートしている。「私たちの国に侵入しようとするキャラバンや不法移民、密入国者を目にするたびに、お粗末な移民法を変えさせようとしない民主党を非難すべきだ! 中間選挙ではそれを思い出してほしい!」

それだけではない。トランプは、民主党がキャラバンの人々にお金を払って国境に向かわせ、危機を作り出そうとしているとも主張している。ここでも根拠はない。

10月18日にモンタナ州ミズーラで開催された集会では、「(民主党は)人々に多額のお金を渡して、中間選挙の前までに国境に来てもらおうとしている。そうすれば(共和党にとって)が困ると思っているのだ」と言った。


(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

冷戦時代の余剰プルトニウムを原発燃料に、トランプ米

ワールド

再送-北朝鮮、韓国が軍事境界線付近で警告射撃を行っ

ビジネス

ヤゲオ、芝浦電子へのTOB価格を7130円に再引き

ワールド

インテル、米政府による10%株式取得に合意=トラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
  • 3
    一体なぜ? 66年前に死んだ「兄の遺体」が南極大陸で見つかった...あるイギリス人がたどった「数奇な運命」
  • 4
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 5
    『ジョン・ウィック』はただのアクション映画ではな…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 8
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 9
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 6
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 7
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 8
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 9
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 10
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中