最新記事

貿易戦争

NAFTA、期限切れ目前で合意 トランプが自動車ではカナダ、メキシコに配慮?

2018年10月1日(月)17時45分

9月30日、カナダと米国は、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉で合意にこぎつけた。これにより、メキシコとの3カ国協定が維持されることになる。写真はカナダのオンタリオ州ウィンザーにある自動車製造工場で2011年1月撮影(2018年 ロイター/Rebecca Cook)

カナダと米国は30日、難航していた北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉で合意にこぎつけた。これでメキシコも含めた3カ国協定が維持されることになる。

焦点の1つだった自動車は、トランプ米大統領が輸入車に25%の関税を課すことを引き続き可能にする一方で、関税発動の場合にはカナダとメキシコから輸入する完成車や部品の多くを課税適用外とすることが決まった。

トランプ米大統領は、カナダが米東部時間10月1日午前0時(日本時間午後1時)までに合意に署名しなければ、NAFTAをメキシコとの2国間協定にすると警告していた。期限を迎える数時間前に合意に至ったことになる。

カナダと米国は共同声明で、新協定の「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が、より自由な市場とより公正な貿易、力強い経済成長を地域にもたらす」と表明した。

トルドー首相は深夜の閣議後、記者団に「カナダにとって良い日だ」と語った。

一方、米政権の高官は「トランプ大統領にとって偉大な勝利であり、国際貿易問題における大統領の戦略の正しさを証明している」と述べた。

関係筋によると、トランプ大統領はカナダとの合意を承認したという。米高官は、米政府は11月末に新たな貿易協定に調印する意向だと語った。

カナダの複数の関係筋によると、新協定では現行の紛争解決制度が維持された。

ただその代償は高く、カナダは国内乳製品市場の約3.5%へのアクセスを米酪農業者に与えることに同意した。

関係筋は、カナダ政府が今回の合意で悪影響を受ける酪農業者に補償を行う用意があると付け加えた。

自動車については、カナダとメキシコに寛容な合意となった。

補足文書によると、トランプ大統領が安全保障上の理由で25%の自動車関税を課した場合、カナダからの輸入車は最大260万台が関税の適用外となる。メキシコからの輸入車も同規模の免税枠が設けられる。

両国で生産されたピックアップトラックは、全てが課税対象から外れる。部品については、メキシコの輸出品には年間1080億ドル、カナダからの輸出品には324億ドルの対米輸出免税枠が設定される。

こうした枠はカナダとメキシコの生産規模を大きく上回っており、両国は輸出を増やす余地が残る。また、自動車部品は、時給16ドル以上の地域で製造されたものの比率を増やす。雇用をメキシコ国外に移す狙いがある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、新誘導技術搭載の弾道ミサイル実験

ワールド

アフガン中部で銃撃、外国人ら4人死亡 3人はスペイ

ビジネス

ユーロ圏インフレ率、25年に2%目標まで低下へ=E

ビジネス

米国株式市場=ダウ終値で初の4万ドル台、利下げ観測
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 5

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中