最新記事

野生生物

日本の象牙ネット取引停止求めるWWF 大手ではヤフーのみ応じず「合法に行われている」

2018年9月14日(金)07時30分

9月13日、世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は、ヤフーが象牙取引を容認していることで、国際的な違法取引の供給源になるリスクがあるとして、取引停止を求める要望書を24の国・地域のWWFと連名で提出した。写真は密輸業者から押収され燃やされる象牙。ケニアのナイロビ近郊で2016年4月撮影(2018年 ロイター/Siegfried Modola)

世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は13日、ヤフーが象牙取引を容認していることで、国際的な違法取引の供給源になるリスクがあるとして、取引停止を求める要望書を24の国・地域のWWFと連名で提出した。

WWFジャパンの野生生物取引監視部門トラフィックは同日、インターネット上で行われている象牙取引の実態調査に関する報告書を公表した。それによると、すでに取引を禁止している楽天とメルカリは「禁止方針が大きな効果を見せた」と結論付けたが、取引を容認しているヤフーについては「取り組みが国内規制が求める最低限度にとどまっており、合法性の証明が欠如した製品の取引を相当量許容している」と批判。「国際的な違法取引にも影響しかねない」として取引停止を求めた。

日本では牙の形をした「全形」以外の製品については合法性の証明は義務化されていないため、個人がヤフーのオークションサイトで象牙のアクセサリーなどを取引しても違法になるわけではない。ただ、トラフィックはこの象牙を手軽に売買できる環境が規制の抜け穴になっているとの見方を強めている。

報告書では、中国で摘発された密輸事件の被告が裁判でヤフーオークションで入手したと証言したケースも紹介されている。

トラフィックによると、日本におけるインターネットでの象牙取引は、特に中国への違法輸出という形で国際的な違法取引の供給源になっていると認識されているという。

これに対して、ヤフーの広報担当者は「違法な象牙取引は許容していない」とあらためて強調。「適法な取引の後の流通状況を当社が把握することは難しく、違法な輸出は税関を中心に取り締まって欲しい」と要望した。

政府によると、日本がワシントン条約の締約国になってから象牙の国際取引が禁止されるまでの間(1981年から1989年)に合法的に輸入した象牙は約2006トン。さらにその後の2回の輸入で89トンが入ってきており、合法的に輸入された象牙は約2095トンにのぼる。

ヤフーはこの象牙がインターネットで合法的に取引されているという立場だ。

トラフィックによると、象牙目的で違法に殺されるアフリカゾウは年間2万頭以上にのぼり、過去10年間、危機的なレベルにある。ヤフーは「日本の国内取引がアフリカゾウの密猟につながっているというデータはない」とした上で、「密猟や絶滅につながるような取引も許容していない」と重ねて強調した。

(志田義寧)

[東京 13日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ウクライナ和平案の感謝祭前の合意に圧力 欧州は

ビジネス

FRB、近い将来の利下げなお可能 政策「やや引き締

ビジネス

ユーロ圏の成長は予想上回る、金利水準は適切=ECB

ワールド

米「ゴールデンドーム」計画、政府閉鎖などで大幅遅延
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体制で世界の海洋秩序を塗り替えられる?
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 7
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 8
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中