最新記事

ゲーム

日本発のヤクザゲーム『龍が如く』がアメリカを席巻⁉

The Silly Criminal of Kamurocho

2018年9月25日(火)15時30分
ジェン・グレノン

猫カフェ経営や音楽ビデオ撮影など「寄り道」的な要素も含まれている COURTESY OF SEGA

<シリアスな抗争劇の合間に「息抜き」も楽しめる『龍が如く』シリーズの英語版がヒットする理由>

日本では05年の発売以来、根強い人気を誇るセガのアクションアドベンチャーゲーム『龍が如く』シリーズ。ヤクザの世界を舞台に、過激な殴り合い、いちかばちかの陰謀、ドラマチックなストーリーが展開する。主人公の桐生一馬はけんかの合間に神室町(歌舞伎町がモデルの歓楽街)でカラオケやギャンブルも楽しむ。

17年には、第1作より前の時代を描く『龍が如く0 誓いの場所』が英語版『Yakuza 0』としてリリース。人気は海外にも広がっている。

15年、セガはシリーズ誕生10周年を機にプレイステーション(PS)4に対応し、欧米で急増するプレーヤーにもアピールすべく、初期5作品のフルリメークを計画した。その第2弾がアメリカで8月28日にリリースされた『Yakuza Kiwami 2』(『龍が如く 極 2』)だ。映像と戦闘システムを全面的に見直し、新たなシーンやせりふも加えた。

アニメ人気のおかげで、欧米のプレーヤーも日本式のストーリー展開を受け入れやすくなっている。「アメリカのプレーヤーは成熟し、日本人の主人公に感情移入しやすく、ゲームの世界に入り込むのに必要な知識も持っている。10年前とは大違いだ」と、セガ・オブ・アメリカのサム・マレン生産部長は言う。「日本のバラエティー的なコンテンツが好きなら、Yakuza シリーズを気に入るはずだ」

日本語のナレーションとせりふを英訳した英語版のローカライズチームは、『龍が如く』の日本ならではの感性とユーモアが伝わるよう心血を注いだ。この姿勢は、Yakuza シリーズをアメリカが舞台の犯罪ゲーム『グランド・セフト・オート(GTA)』の東京版と位置付ける、従来のマーケティング戦略との決別を意味する。

Yakuza シリーズは裏社会が舞台とはいえ、桐生が猫カフェを経営したり、ゾンビをテーマにした音楽ビデオを撮影したりと「寄り道」的な要素もふんだんに盛り込まれている。

バラエティー要素も大事

こうしたアプローチは当初、社内の他の部署になかなか受け入れられなかった。「みんな『Yakuza』を誤解していた」と、マレンは言う。「彼らが真っ先に話題にしたがるのはリアルな犯罪的要素だ。もういいかげんにしろって感じだった。そういう見せ方も以前に試したけど、駄目だった」

「Yakuzaシリーズはヤクザの裏社会の話じゃない」と、ローカライズ版プロデューサーのスコット・ストリチャートは言う。「暗黒街で生き抜きながら、自分なりのモラルを見いだそうとしている男の話だ。日本版に近づいた結果、より多くのファンを引き付けている」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ

ワールド

米首都で34年ぶり軍事パレード、トランプ氏誕生日 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 7
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中