最新記事

アシッドアタック

酸攻撃に遭い地獄を見た女性「誰にも醜いとは言わせない」

The Acid Attack Victim Setting a New Beauty Standard

2018年9月21日(金)20時15分
ホリー・スネリング

5年前、通り魔に硫酸を浴びせられ、心ないイギリスの新聞に「ひどく醜い」と書かれて立ち上がったケイティ・ジー Holly Snelling/Newsweek

<酸攻撃で負傷した外見を「ひどく醜い姿」と新聞に書かれたことで、彼女は従来の美しさの基準を塗り替える大胆な行動に出た>

「大声で助けを呼びながら、シャワーで全身を洗った」

ケイティ・ジー(23)は、人生を永遠に変えてしまった5年前の酸攻撃のことを語った。「あの場を生き残るには、5秒先のことを考えるので精一杯だった」

ロンドン出身で当時18歳だったジーが、大学入学前に友人と一緒にアフリカのタンザニア沖の島ザンジバルに行き、子供たちに英語と算数を教えていた時だった。

ある夜の宿への帰り道、スクーターに乗った男2人が突然2人の顔面に液体を浴びせて走り去った。

「恐怖のあまり混乱した。同時に、やるべきことを合理的に考えていた。浴室に向かってあんな必死で走ったことはない。硫酸をかけられて私が最初にやったのは、スクーターのナンバープレートを見ることだった」

自信に満ちた現在

地獄のような苦痛はそれだけで終わらなかった。全身に硫酸を浴び、着ていた服はボロボロだ。病院では、硫酸を洗い落とすのに使う塩水を切らしていた。清潔な水を求めて駆け込んだホテルにも、入室を拒否された。結局、プールで5時間シャワーを浴び続けた。

彼女はその後、ロンドンの病院に2カ月入院し、60回超の手術を受け、セラピーに通った。友人全員が大学に進学したが、彼女は顔と全身に負った傷の治療をしなければならなかった。事件の恐ろしい記憶が、常に脳裏に付きまとった。

事件から5年経ち、ジーの境遇は大きく変わった。大学を卒業し、大学院への進学も決まった。自信に満ち、リラックスして見える彼女の目下の悩みは、どこにでもいる23歳の女の子と同じだ。「私の髪、ベタついてませんか?」──インタビューでカメラを回し始めたときも、そんなことを気にしていた。

事件後、実はジーはもう一つ、忘れられない衝撃に襲われた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=円急伸、財務相が介入示唆 NY連銀総

ワールド

トランプ氏、マムダニ次期NY市長と初会談 「多くの

ビジネス

米国株式市場=大幅高、12月利下げ観測で テック株

ワールド

ウ大統領、和平案巡り「困難な選択」 トランプ氏27
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 8
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中