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ミャンマー

ロヒンギャ虐殺の黒幕にこそしかるべき法の裁きを

2018年9月15日(土)14時30分
リンダ・ラクディール(ヒューマン・ライツ・ウォッチ・アジア局法律顧問)

果敢に真実を追求したワ・ロンらはそのツケを払わされている。2人は17年9月にミャンマー西部ラカイン州で軍がロヒンギャの男性10人を虐殺したとされる件を取材していた。こうした「民族浄化」を恐れて、同年8月以降72万人以上のロヒンギャが隣国バングラデシュに避難している。2人の記事で殺害の証拠を突き付けられた軍は今年4月、兵士7人が懲役10年の判決を受けたと発表した。

8月27日、国連はラカイン州でのジェノサイド(集団虐殺)と人道に対する罪で軍幹部を訴追すべきとの調査報告書を発表した。一方、ミャンマー政府は虐殺を否定。真実を明らかにしようとする人々が軍と警察に逮捕されても、見て見ぬふりだ。だが逮捕も実刑判決も、ロヒンギャに対する残虐行為を世界から隠すことはできない。逆にミャンマーの報道の自由の危機を際立たせるだけだ。

ウィン・ミンは大統領としての憲法上の権限を行使し、記者2人に恩赦を与えるべきだ。恩赦が実現し、真に訴追されるべき人々が必ず罪に問われるよう、関係各国の政府は圧力を強化しなければならない。

<本誌2018年9月18日号掲載>

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