最新記事

トルコ・リラ

リーマンショックから教訓を学ばなかった新興国トルコ、対策施したロシア

2018年9月14日(金)11時20分

9月13日、欧州復興開発銀行(EBRD)のチーフエコノミスト、セルゲイ・グリエフ氏は、ロイターとのインタビューで、新興国のうちリーマンショックの教訓から最も学ばなかったのがトルコで、逆に一番対策を講じたのがロシアとの見方を示した。写真は為替レートを示す電子ボード。イスタンブールで8月撮影(2018年 ロイター/Osman Orsal)

新興国のうちリーマンショックの教訓から最も学ばなかったのがトルコで、逆に一番対策を講じたのがロシア──。欧州復興開発銀行(EBRD)のチーフエコノミスト、セルゲイ・グリエフ氏は13日、ロイターのインタビューでこうした見方を示した。

グリエフ氏は「新興国にとって(リーマンショックの)主な教訓は、自国に厚みと相当な規模を持つ金融市場を構築する必要性だ。それがないと、他国で発生した問題が外的ショックとして波及し、危機を迎えてしまう」と語った。

こうした発言は、世界的な超低金利局面でドル建て債務を膨らませ過ぎた国に対して国際決済銀行(BIS)や国際通貨基金(IMF)が行った警告とも相通じる。

現在ドルが上昇し、債務返済のために外貨準備の目減りを余儀なくされているからだ。その一例がトルコで、通貨リラが急落している。

グリエフ氏は「(トルコが抱える問題は)高水準ドル建て債、中央銀行による独立した決定権と物価目標の欠如で、それがユーロ建て金融市場を消し去り、リラの金融商品のデュレーションを短縮化し、債務負担を増大させている」と指摘した上で、「避けることができただけに非常に残念だ」と嘆いた。

同氏は、EBRDのエコノミストチームがトルコ経済に関する11月の次回点検時に、成長率見通しを引き下げることになると付け加えた。

一方でロシアは、リーマンショック以降に通貨ルーブルを変動相場制に移行させ、銀行規制を強化し、ルーブル建て債市場の拡大を推進しており、同氏は新興国が見習うべきお手本だと賞賛した。

[ロンドン 13日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ政権、零細事業者への関税適用免除を否定 大

ビジネス

加藤財務相、為替はベセント米財務長官との間で協議 

ワールド

トランプ米大統領、2日に26年度予算公表=ホワイト

ビジネス

米シティ、ライトハイザー元通商代表をシニアアドバイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中