最新記事

北極開発

グリーンランドの地下資源と北極圏の軍事拠点を狙う中国

China Wants to Build Greenland Airport

2018年9月11日(火)15時00分
ジェイソン・レモン

グリーンランドの氷の下と北極海には豊富な地下資源が眠っているとされる Bob Strong-REUTERS

<グリーンランドの空港建設に中国企業を入れるか否か。デンマークは安全保障上の懸念から反対するが、開発を進めたいグリーンランド自治政府に中国の手が伸びる>

北欧デンマークの自治領グリーンランドで計画されている3つの新空港建設プロジェクトを中国のインフラ大手「中国交通建設」が受注したことに、懸念の声が上がっている。同島にある米空軍基地の運用が脅かされる可能性があるという。

世界最大の島グリーンランドは人口わずか5万6000人程度で、移動や輸送を空路に大きく依存している。そのため自治政府は、推定6億ドルをかけて3つの新空港を建設しようとしている。

軍事情報誌ディフェンス・ニュースによれば、かつて汚職などを理由に世界銀行のブラックリストに名を連ねたこともある国有企業の中国交通建設がこの建設プロジェクトの入札に手を挙げ、同社を選んだ。だが、アメリカの同盟国でグリーンランドの安全保障を担うデンマーク政府はこの決定に難色を示した。だがグリーンランド自治政府は、中国の参加は真剣な検討に値する、と支持している。

中国が北極圏でも影響力を拡大しつつ世界各地の交易路の支配権を握ろうとするなか、一部の専門家は、中国がグリーンランドのインフラに投資を行うことで、同島にある米空軍のチューレ空軍基地が島から追い出されかねないと懸念する。

同盟国アメリカへの影響を憂慮

デンマーク王立防衛大学戦略研究所のジョン・ラーベククレメンセン准教授はディフェンス・ニュース誌に対して、次のように語った。「グリーンランドで中国がプレゼンスを増大させれば、同島におけるアメリカの立場は複雑なものになる。最終的に中国がグリーンランド自治政府に圧力をかけて米軍を撤退させるか、あるいは中国が同島で自前の軍または軍民共用のプレゼンスを確立しようとするかもしれない」

デンマークのある高官もロイター通信に対し「中国はこれまでグリーンランドとの取引実績がなく、我々も憂慮している」と語った。

デンマークは1951年にアメリカと協定を結び、米政府に対してグリーンランドの領土をほぼ無制限に使用する権利を付与している。またディフェンス・ニュース誌によれば、デンマークはグリーンランドの外交と安全保障のすべてを担っているものの、海外企業からの投資については法律上のグレーゾーンになっているという。

過去には、2016年に中国企業がグリーンランドにある旧米海軍基地施設を買収する案を持ちかけた際、デンマーク政府は米政府の希望を受けてこれを阻止した例がある。

中国からの投資の問題は、グリーンランドに内紛をもたらしている。AFP通信によれば、空港やその他のインフラの建設プロジェクトの進め方をめぐる対立から、9月10日に連立政府が崩壊したばかり。デンマーク政府が中国企業の空港建設参加を阻止しようと介入しようとしたことに、左派のナレラック党が反発して連立を離脱したのが原因だ。

(翻訳:森美歩)

ニュース速報

ワールド

英とEU、離脱協定案修正で合意 英議会可決は不透明

ビジネス

米鉱工業生産、9月は製造業0.5%低下 GMストが

ビジネス

20年の独GDP成長率見通し、1.0%に引き下げ=

ワールド

英EU離脱巡る不透明性解消、世界経済に恩恵=世銀総

MAGAZINE

特集:AI vs. 癌

2019-10・22号(10/16発売)

ゲノム解析と人工知能で最適な治療薬を発見する究極の癌治療が人類を「最後の敵」から救う日

人気ランキング

  • 1

    韓国は、日本の対韓感情が大きく悪化したことをわかっていない

  • 2

    中国の探査機が月に持ち込んだ植物の種、ハエの卵......で起きていたこと

  • 3

    ヘイトに立ち向かったK-POPアイドル、ソルリ追悼写真集

  • 4

    ラグビーW杯で考えさせられる、日本の「おもてなし力」

  • 5

    日本と韓国の危険なゲームが世界経済を殺す

  • 6

    韓国で長引く日本製品不買運動、韓国企業への影響が…

  • 7

    韓国・文在寅の賃上げ政策が招いたこと──映画館からス…

  • 8

    トルコの侵攻を黙認する見返りに、米国、ロシア、シ…

  • 9

    消費税ポイント還元の公式アプリが「使えない」理由

  • 10

    イランで逮捕された「ゾンビ女」の素顔

  • 1

    韓国は、日本の対韓感情が大きく悪化したことをわかっていない

  • 2

    全米最悪93人の連続殺人犯が「驚異的」な記憶力で描いた被害者の肖像

  • 3

    イランで逮捕された「ゾンビ女」の素顔

  • 4

    ヘイトに立ち向かったK-POPアイドル、ソルリ追悼写真集

  • 5

    韓国・文在寅の賃上げ政策が招いたこと──映画館からス…

  • 6

    中国の探査機が月に持ち込んだ植物の種、ハエの卵...…

  • 7

    日本に巣食う「嫌韓」の正体

  • 8

    日本が「生産性が低すぎる国」になった五輪イヤー 衰…

  • 9

    「OK」のサインは白人至上主義のシンボルになったの…

  • 10

    ラグビー日本代表「多様性ジャパン」は分断と対立を…

  • 1

    韓国で長引く日本製品不買運動、韓国企業への影響が徐々に明らかに

  • 2

    写真撮影で「怪しいOKサイン」を出したテーマパークのスタッフが解雇

  • 3

    イランで逮捕された「ゾンビ女」の素顔

  • 4

    「OK」のサインは白人至上主義のシンボルになったの…

  • 5

    韓国は、日本の対韓感情が大きく悪化したことをわか…

  • 6

    繁殖を止めるために遺伝子組み換えされた蚊、自然界…

  • 7

    「独島が韓国の領土であるとの証拠は何もない」韓国…

  • 8

    米韓関係の険悪化も日本のせい⁉ 文在寅がまた不安な…

  • 9

    コモドドラゴンの体内に「鎧(よろい)」があること…

  • 10

    サウジ原油施設攻撃で世界は変わる

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月