最新記事

朝鮮半島

北朝鮮、金王朝3代悲願の高速鉄道は南北緊張緩和で実現するか

2018年9月2日(日)12時00分

写真は完成した庫岩ー畓村鉄道の橋。2018年5月KCNA提供(2018年 ロイター)

北朝鮮を支配する金一族にとって、同国の主要都市や世界各地を最先端の鉄道で結ぶことは、長年の夢だった。

そして今、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、孤立する北朝鮮に対する国際的な締めつけが緩和する機会に乗じて、欧州や隣国韓国にも引けを取らないような高速鉄道ネットワークの建設計画を進めようとしている。

金委員長は、韓国やフランスなどから協力を得られないかを模索するよう政府高官に指示を下したと、事情に詳しい韓国の業者と北朝鮮外務省高官が明らかにした。

韓国の技術者やコンサルタントも、北朝鮮との鉄道建設プロジェクトに向けた構想を練り始めているという。

朝鮮半島をロシアや中国、そしてその先の地域と結ぶ、新たな鉄道建設は、地域の貿易や観光を発展させるための鍵だと南北両国は考えている。

10年以上ぶりとなる南北首脳会談が4月に開催されて以来、こうした鉄道建設に向けた期待を受けて、鉄道車両メーカーの現代ロテム<064350.KS>など、韓国の鉄道関連株が上昇している。

だが構想の実現には幾多の障害がある。

国連安全保障理事会の決議に違反して核兵器開発を進めている北朝鮮で事業を行うことに対しては、広範な制裁が科されている。そして、北朝鮮の不安定な電力インフラも懸念要因だ。

南北双方の政府関係者は、「非商業的な公共インフラ」を一定程度認める、という国連制裁の例外条項を適用することで、こうした鉄道計画が制裁から免れる可能性を期待している。

フレンチ・コネクション

北朝鮮の上級外交官は6月、鉄道建設におけるフランスとの提携を仏上院に申し入れ、具体的には高速鉄道TGVを製造した重電大手アルストムと、フランス国有鉄道(SNCF)を提携先の候補として名指しした。

「これらは、制裁の影響を受けない分野だ」と、パリの国連教育科学文化機関(ユネスコ)北朝鮮代表部のKim Yong Il氏が述べていたことが、これまで明らかになっていなかった発言記録で分かった。

韓国が2004年に建設した韓国高速鉄道(KTX)には、アルストムの技術を採用している。同鉄道は、北朝鮮の老朽化した鉄道と比べ6倍以上速い。

とはいえ、国連制裁決議がインフラをどう定義するかは、非常に不明確であり、フランスの鉄道各社は、北朝鮮と組む計画はない、とロイターに語った。

「北朝鮮を巡る国際的な情勢に鑑み、そのような協力は考えられない。SNCFとして、そのように回答した」と、同社の広報担当者は述べた。仏アルストムは、「(北朝鮮の)代表者とは誰とも接触を続けたり、議論したりしていない」と回答した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今

ワールド

APEC首脳会議、共同宣言採択し閉幕 多国間主義や
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中