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死刑制度皇太子の改革路線でも変わらない、死刑大国サウジアラビア
女性の自動車運転の解禁などリベラルな改革が実施されている一方で…… REUTERS
<ソフト路線でイメチェンを図ってはいても、サウジアラビアの政治的抑圧は変わっていない>
近年、社会の変革を精力的に推し進めているかに見えるサウジアラビアだが、死刑制度に関しては従来の方針を変えるつもりがないらしい。
人権擁護団体「欧州サウジ人権組織(ESOHR)」が先頃発表した報告書によると、サウジアラビアで昨年死刑に処せられた人は146人に上る。この数字は、中国(推定1000人以上)、イラン(少なくとも507人)に次いで世界で3番目に多い(アメリカは23人)。
「死刑という取り返しのつかない刑罰が、人々に恐怖心を植え付ける目的で行われている」と、ESOHRの報告書は批判している。「適正な法的手続きを欠いており、処刑が政治的手段として用いられている点は、ことのほか見過ごせない」
若いムハンマド皇太子の号令の下、サウジアラビアは進歩的なイメージを打ち出そうと努めてきた。皇太子が掲げる改革プラン「ビジョン2030」は、経済を近代化し、社会の活力を高めることを目指している。
国外からの投資を引き付け、国のソフトパワー(文化的魅力)を高める狙いで、リベラルな改革も相次いで実行されている。映画館の開館や、ポップミュージックのコンサート、女性の自動車運転なども解禁された。
しかしその半面、政治的抑圧は今も残っている。サルマン国王が絶対権力を握り続けていることには変わりがない。
最近、人権活動家や有力実業家、対立する王族を弾圧の標的にしているのは、国民に対して明確なメッセージを送ることを意図した行動なのだろう。改革はあくまでも国王からのプレゼントであって、国民が要求するものではないのだ、と。
「劣悪な人権状況がますます危機的な様相を呈し始めている。表現の自由と結社の自由は厳しく制限されていて、恣意的な逮捕もまかり通っている」と、ESOHRは指摘する。
15年のサルマン国王の即位と時を合わせて、サウジアラビアでは死刑が増えている。ここ数年の死刑件数は、90年代以降では最も多い水準だ(昨年は前年より8件少なかったが)。
昨年処刑された146人の内訳は、サウジアラビア国民が90人、外国人が56人。投石や銃殺による処刑も行われるが、最も多いのは斬首だ。処刑前に鎮静剤を飲ませ、その上で頭部を切断する。その後、再び頭部を胴体に縫い付けて磔はりつけにする場合もある。見せしめにするためだ。
死刑の大量執行が行われる場合もある。16年には、テロ容疑で有罪になった47人の処刑が斬首と投石により1日で行われた。これは、80年代以降で最も大規模な同時執行だった。
85~16年にサウジアラビアで死刑になった人は2000人を超すと、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは報告している。ESOHRによれば、サウジアラビアには現在も、死刑判決を言い渡されて控訴している人が10人、判決への異議申し立ての手段を全て使い果たした死刑囚が31人いるという。
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