最新記事

インバウンド

運営権獲得へ海外カジノ事業社が猛攻「大阪夏の陣」

2018年8月22日(水)19時35分

ドリームアイランド「夢洲」

大阪は、「夢洲(ゆめしま)」と呼ばれる大阪湾の人工島にカジノを設置したいとしている。

夢洲は、1970年代の大阪における経済成長期に造られた。海岸沿いのエリアはかつて、化学工場や造船所が並び、多くの労働者が住む地域だった。

バブル経済の崩壊で大阪も打撃を受け、20年間にわたりこのベイエリアと大阪の街自体に活力を取り戻すことができずにいる。

しかし、大阪への外国人旅行者は5年間で4倍超に増え、2017年には過去最多の1100万人の外国人客が大阪を訪れた。「食い倒れ」で知られる食べ物の魅力と近隣の観光地へのアクセスのよさが観光客を引き付け、カジノ事業者の期待も高まる。

メルコのホーCEOはロイターの電話取材で「私の人生で最大のチャンスだ」と述べた。

大阪府の資料によると、2012年から2018年5月までに、11のカジノ企業の幹部が「表敬訪問」として、松井府知事と面会した。2017年5月以降、IR関連企業の関係者は、職員と119回会っている。大阪府は職員と会った企業の内訳については明らかにしなかった。

心をつかむ

地元メディアの報道によると、メルコによる直近の大阪府への寄付は5000万円とされるが、これが初めてではない。4人が亡くなった今年6月の大阪府北部地震と7月の水害被害にも、メルコは寄付を行った。

メルコは災害への寄付の額を明らかにしなかったが、天神祭の花火のスポンサー料は約9000ドルと試算されている。

メルコ日本法人の白男川亜子社長はロイターに対し、寄付について、大阪府に有利な扱いを求める目的ではないことを説明したと話した。

白男川氏は「やり過ぎと思われるかもしれないが、たまたま知事との面会が花火と同じ日になっただけ」と述べた。

マカオにおけるメルコのライバル、MGMは大阪でさらに大きなプレゼンスを築こうと、事務所を拡大している。同社は、大阪の府民と企業の心をつかみたいと話した。

天神祭の前に、MGMは船上パーティーへの招待券を、地元の商店街のくじ引きの景品に提供した。

IR事業への参画を目指す中小企業の組織、「IR推進100社会」の堀感治事務局長は、MGMは着実に大阪企業との関係を築いていると指摘する。

MGMのバワーズ氏によると、東京をベースとするGRジャパンは、MGMの代理としてロビー活動を展開している。GRジャパンは今年2月に大阪事務所をオープンし、副所長として、松井知事が代表を務める日本維新の会の元衆院議員を雇った。

ラスベガス・サンズは、地元自治体や企業、地域コミュニティーとの関わりを重視していると話す。同社のシェルドン・アデルソンCEOは、2017年9月に松井知事と面会している。サンズはロイターのインタビューの申し入れを拒否した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

米安保戦略、ロシアを「直接的な脅威」とせず クレム

ワールド

中国海軍、日本の主張は「事実と矛盾」 レーダー照射

ワールド

豪国防相と東シナ海や南シナ海について深刻な懸念共有
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中