最新記事

消費社会

中国カフェ戦争、スタバに挑む急成長の配達重視「中華珈琲」チェーン

2018年8月1日(水)16時00分

フラッシュモブ

とはいえ、店舗コストや品質管理の必要性を考えれば、インターネットを利用したビジネスモデルはコーヒー業界に通用しないとみる人もいる。

「ラッキンが本当に顧客を囲い込んで、配車サービス市場に見られるような独占状態を築けるかどうかはまだ分からない」と、技術コンサルタント会社チャイナ・インターネット・データセンターのLiu Xingliang社長は言う。

北京で取材した顧客のなかには、ラッキンの今後の課題を指摘した人もいた。

広告業界で働くLiu Xuさん(23)は、ラッキンについて、通りすがりを装い突如集まる「フラッシュモブ」のようだと話す。好奇心からコーヒーを試してみたが、手で入れた、単一産地の豆を使ったコーヒーの方が好きだと言う。

学生のLian Yihengさん(22)は、ラッキンの割引や配達の便利さに魅力を感じるものの、長い目で見て顧客をひきつけるには、コーヒーの種類や店の内装を工夫する必要があると話した。

銭CEOは、店内でコーヒーを飲める店を増やし、配達専門店の割合を減らす方針だと話す。ロケーションや内装がより重要になるため、支出が増えることになる。コーヒーの品質については、店ではエチオピア産のアラビカ種を選んで使っていると説明した。

ラッキンの拡大と並行する形で、カナダのティム・ホートンズのようなスタバのライバル企業も中国市場に力を入れている。ティム・ホートンズは、今後10年で中国に1500店舗を展開する予定で、他の小規模な地域チェーン店も投資を加速させている。

中間所得層が拡大を続けるなか、中国のコーヒーチェーン店は小さな町にも進出。コンサルタント会社ミンテルによると、市場は年率5-7%のペースで成長している。

上海に8店舗を展開するダブル・ウィン・カフェのオーナー、Li Yibei氏は、ラッキンは市場にインパクトを及ぼすだろうが、それでもまだ十分なスペースがあると話す。

「彼ら(ラッキン)はスターバックスに一定の打撃となるだろうが、それでも熱心なスタバファンは多い。顧客を少しは奪えるかもしれないが、それほど多くはないだろう」と、彼女は話した。

スタバが中国で正式にオンライン注文に乗り出す可能性もある。

辞任を表明しているスタバのハワード・シュルツ執行会長は今月上海で、中国アリババの創業者、ジャック・マー氏は近しい友人だと発言。アリババ傘下のフードデリバリー会社「Ele.me(餓了麼)」と協力し、中国でオンライン配達サービスを開発する可能性に言及した。

シュルツ氏はまた、中国経済の減速は懸念していないと述べている。

「質の良いコーヒーと競争が市場に増えるにつれ、中国の人たちが良いコーヒーに接する機会も増える」と、シュルツ氏は指摘。

「市場に参入してくる新興プレーヤーは、実はスターバックスの利益になる」

(翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)

Pei Li and Adam Jourdan

[北京/上海 24日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ大統領府長官が辞任へ、汚職疑惑が理由か 

ビジネス

米株式ファンド、6週ぶり売り越し

ビジネス

独インフレ率、11月は前年比2.6%上昇 2月以来

ワールド

外為・株式先物などの取引が再開、CMEで11時間超
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 10
    バイデンと同じ「戦犯」扱い...トランプの「バラ色の…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中