最新記事

貿易戦争

トランプのエネルギー輸出構想に暗雲 貿易戦争で中国がLNG狙い撃ち

2018年8月8日(水)11時20分

8月3日、中国が公表した米製品に対する追加報復関税に液化天然ガス(LNG)が含まれたことで、両国の貿易摩擦に新たな側面が開かれた。写真は2014年4月、米テキサス州コーパスクリスティの港で、原油を積み込んだ荷船(2018年 ロイター/Darren Abate)

中国が3日に公表した米製品に対する追加報復関税に液化天然ガス(LNG)が含まれたことで、両国の貿易摩擦に新たな側面が開かれた。これによってトランプ米政権が提唱するエネルギー輸出の大幅拡大構想の雲行きが怪しくなりかねない事態が出現した。

トランプ政権はこれまで繰り返し、積極的に世界中に化石燃料供給を増やしていく姿勢を打ち出しており、国内の原油と天然ガスの増産を促すため規制緩和を進めてきた。

しかしバークレイズのエネルギー市場調査責任者マイケル・コーエン氏は「世界最大級のエネルギー消費国(である中国)が米国産エネルギー輸入の障壁を引き上げつつある局面で、米国がエネルギー(輸出)の超大国になるのが難しいのは明らかだ」と指摘する。

米国はガソリンやディーゼルといった燃料の輸出規模が世界最大で、LNGについても来年までに世界屈指の輸出大国になる勢いがある。昨年のLNG輸出額は33億ドルだった。

一方中国は、今回報復関税対象にLNGを正式に加える前から、既に過去2カ月間で米国からのLNG輸入を抑制してきた。中国の原油輸入先でも米国はカナダに次ぐが、ここ数カ月は米国から中国への出荷が落ち込んでいる。

2016年2月から今年5月までに中国は米国産LNG全体の約14%を購入したものの、6月に米国から中国に到着した輸送船は1隻にとどまり、7月はゼロ。今年1─5月は計17隻を受け入れていた。

厦門大学のLin Boqiang教授(エネルギー論)は「米国のガス業界は、中国を将来の大きな市場とみなしているのに、今でも中国がごく少量しか輸入していないので、報復関税でさらに大きな打撃を受けるだろう」と話した。

世界の石油出荷動向を調べているクプラーによると、7月の米国から中国への原油輸出量は推定日量22万6000バレルで、過去最高だった3月の44万5000バレルから減少している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルのミサイル、イランの拠点直撃 空港で爆発

ビジネス

日経平均は1100円超安で全面安、東京エレクが約2

ワールド

イスラエルのイラン報復、的を絞った対応望む=イタリ

ビジネス

米ゴールドマン、24年と25年の北海ブレント価格予
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中