最新記事

人権問題

ベトナム、人権活動家に禁固20年 最高刑判決にみる政府の焦り

2018年8月23日(木)12時15分
大塚智彦(PanAsiaNews)

禁固20年の有罪判決を受けたレ・ディン・ルオン被告 REUTERS

<政府に不利な発言をする活動家を次々に拘束しているベトナム。有罪判決の影には警察による虚偽証言の強要まで......>

ベトナム北中部ゲアン省の裁判所は8月16日、人権活動家で作家でもあるレ・ディン・ルオン被告(53)に対し「国家転覆を図った容疑」で禁固20年の有罪判決を下したことが明らかになった。

ルオン被告の弁護士によると同容疑での禁固20年の判決はこれまでの裁判例では最高刑とみられるという。省政府、裁判所による人権活動家などへの近年相次ぐ厳しい判決の背景に、規制が難しいソーシャルネットワークや動画サイトなどにより、「政府が好ましくない」と考える事情が国外に発信されることへの懸念と焦りがあるものとみられている。

ルオン被告は2017年7月24日に逮捕された。その際、地元警察はルオン被告が米国に本拠を置くベトナム反体制組織「Viet Tan(ベトタン=越新)」のメンバーの疑いがあることを直接の逮捕容疑とした。

ベトタンは正式名称を「ベトナム更新革新党」といい、1982年にベトナム南部で元海軍軍人によって創設された反体制組織。米カリフォルニアに本拠地があり、在米のベトナム人が参加して活動しており、タイのバンコクに連絡事務所がある。

ベトナム政府は2016年にベトタンが総選挙へのボイコットを訴えたことなどからベトタンを「テロ組織」に指定した。ベトタンが関連する活動や集会に参加したり、広報活動やメンバーに勧誘するなど、何らかの関与をした者を「テロ支援者」として検挙・逮捕し、裁判で厳重な処分を下すことを公然と明らかにしている。

このためベトナムでは政治犯、活動家などの摘発にこのベトタンとの繋がりを容疑とするケースが多く「政府、治安当局はベトタンを活動家弾圧の手段にしている」と現地の活動家は話している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

男が焼身自殺か、トランプ氏公判のNY裁判所前

ワールド

IMF委、共同声明出せず 中東・ウクライナ巡り見解

ワールド

イスラエルがイランに攻撃か、規模限定的 イランは報

ビジネス

米中堅銀、年内の業績振るわず 利払い増が圧迫=アナ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中