最新記事

韓国経済

韓国、文大統領「働き方改革」で広がる格差 低所得層にしわ寄せ

2018年7月22日(日)13時48分

7月17日、韓国で今年1月に実施された、過去17年で最大の上げ幅となった17%の最低賃金(時間額)引き上げが、低所得層の収入に逆効果をもたらし、投資や求人を抑制している可能性がある。写真は、ロッテワールドモールで働く作業員。ソウルで2015年3月撮影(2018年 ロイター/Kim Hong-Ji)

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、国民の労働時間を減らつつ賃金を増やしたいと考えている。それを達成すべく、韓国政府は最低賃金を上げ、週の労働時間の上限を引き下げた。

だが、首都ソウルのロッテマートで麦茶の試飲を配るHeo Jeongさん(48)は、そうした政策の結果、収入の3分の1を失ったと話す。

Heoさんが働く店舗は営業時間を短縮し、スタッフの勤務時間を削減した。かつて1カ月に40時間働いていた彼女は現在、32時間勤務で月収は120万ウォン(約12万円)と以前より3分の1少なくなった。手当が付く夜勤にあまり入れず、ボーナスが支給される機会も減っているからだ。

彼女だけではない。7月1日に法定労働時間が1週68時間から52時間に削減されて以来、多くの企業が従業員を増やすよりも終業時間を早めている。

これは、文大統領の改革が裏目に出始めていることを示す多くの兆候の1つであり、格差に正面から取り組む「雇用の大統領」になるとの公約が危ぶまれていると、エコノミストは警鐘を鳴らす。

もう1つの問題は、今年1月に実施して、過去17年で最大の上げ幅となった17%の最低賃金(時間額)引き上げが、低所得層の収入に逆効果をもたらし、投資や求人を抑制している可能性があることだ。

下位20%の家計所得は、第1・四半期に前年同期比で8%低下。韓国統計庁がデータを集計し始めた2003年以降で最大の下げ幅を記録した。また、15─29歳の約4分の1が失業している。

「もっと長く働きたい。できるだけ夜勤に入りたい」とHeoさんは言う。「自分の周りで収入が増えたという人は、実際に必ずしもいるわけではない。私自身、食費を減らしている」

ロッテの広報は、大半の店舗で営業時間を短縮し、その結果、一部の下請け労働者の労働時間が減ったことを確認している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ウクライナ、和平合意へ前進の構え 米大統領「意見相

ワールド

FBI、民主6議員に聴取要請 軍に「違法命令」拒否

ワールド

仏ルーブル美術館強盗、さらに4人を逮捕 宝飾品は依

ビジネス

米財政赤字、10月は2840億ドルに拡大 関税収入
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中