最新記事

犯罪

南の楽園に潜む闇 小児性愛、幼児ポルノの根絶目指すインドネシア

2018年7月6日(金)14時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

2017年3月に逮捕された「Lory Candy」の管理者だったメンバー KOMPASTV / YouTube

<美しいリゾートとして人気が高いインドネシアのバリ島やロンボク島。だがここは幼児性愛や児童ポルノの愛好者たちにとっても楽園だった>

インドネシア国家警察と首都ジャカルタ首都圏警察のサイバー犯罪捜査班は、ソーシャルネットワーク「FaceBook」で幼児ポルノの動画や写真をアップロードして共有していた会員の徹底的な追跡調査を現在も進めていることを明らかにした。

東南アジアでは数年前から幼児ポルノと小児性愛者による子供(10歳以下)への性的犯罪が急増しており、フィリピン、カンボジアと並んでインドネシアの子供は特に深刻な被害を受けているといわれている。

バリ島や東隣のロンボク島はそういった嗜好のある人々の間では「小児性愛者の天国」とも称されているという。

インドネシアにそういう目的で入国するのは主にヨーロッパとオーストラリアの中高年の男性という。少し古い統計だが2014年11月から2015年末までにインドネシアに入国しようとしたオーストラリア人の小児性愛者や性犯罪履歴者100人以上がオーストラリア連邦警察から提供されたブラックリストによって入国を拒否された。

またインドネシア入国管理事務所は、2017年1〜6月に海外から入国しようとした小児性愛、児童ポルノ性犯罪歴のある常習者107人を空港などで摘発、入国を拒否した事例もある。

一方では、水際で防ぎきれず犯罪が明らかになったこともある。2016年バリ島で11人の少女に性的虐待を行ったとして、当時70歳のオーストラリア人男性が禁固14年の有罪判決を受けている。

FaceBookに会員専用幼児ポルノサイト

ソーシャルメディア「FaceBook」には「Lory Candy」という幼児ポルノの専用ページがあった。2017年3月に摘発されて現在は存在しないが、会員専用のページトで、会員になるためには「幼児ポルノ」をアップロードすることが求められた。一度メンバーになるとサイト内の約500本の幼児ポルノ動画、100枚の幼児ポルノ写真を閲覧できる代わりに、定期的に別の幼児を撮影したポルノを投稿することが求められたという。会員が一度動画や写真を閲覧するために「クリック」すると1回につき15,000ルピア(約120円)が製作者の指定口座に振り込まれるシステムだったとされる。

インドネシア警察のサイバー捜査班は、この「Lory Candy」のメンバーだった3人のインドネシア人を6月20日にジャカルタ、ジャカルタ西方のタンゲラン、スマトラ島のパレンバンでそれぞれ逮捕したことを発表した。

そしてさらにメンバーだった20人以上の行方を追っているとして「幼児ポルノ、小児性愛者がいまだに街を徘徊している」と警戒を呼びかけている。

小児性愛者は俗に「ペド」(英語のペドフィリから)と称され、世界的な闇のネットワークに63か国約40のグループが存在し、1グループは約2000人で構成されているという。米連邦捜査局(FBI)など各国の捜査機関による情報交換などで現在インドネシアをはじめ23カ国で摘発、捜査が進行中だ。

インドネシアでは2017年3月に「Lory Candy」に関連して5人を逮捕しており、今回の3人逮捕はそれに続くものだ。


2017年3月「Lory Candy」の管理者だったメンバーが逮捕されたときの記者会見 KOMPASTV / YouTube

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国海警局、尖閣周辺で哨戒と発表 海保は領海からの

ビジネス

韓国、半導体ファウンドリー設立検討 官民投資で31

ワールド

中ロ軍用機の共同飛行、「重大な懸念」を伝達=木原官

ワールド

ベネズエラ野党指導者マチャド氏、ノーベル平和賞授賞
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 4
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 5
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 6
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的、と元イタリア…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中