<美しいリゾートとして人気が高いインドネシアのバリ島やロンボク島。だがここは幼児性愛や児童ポルノの愛好者たちにとっても楽園だった>

インドネシア国家警察と首都ジャカルタ首都圏警察のサイバー犯罪捜査班は、ソーシャルネットワーク「FaceBook」で幼児ポルノの動画や写真をアップロードして共有していた会員の徹底的な追跡調査を現在も進めていることを明らかにした。

東南アジアでは数年前から幼児ポルノと小児性愛者による子供(10歳以下)への性的犯罪が急増しており、フィリピン、カンボジアと並んでインドネシアの子供は特に深刻な被害を受けているといわれている。

バリ島や東隣のロンボク島はそういった嗜好のある人々の間では「小児性愛者の天国」とも称されているという。

インドネシアにそういう目的で入国するのは主にヨーロッパとオーストラリアの中高年の男性という。少し古い統計だが2014年11月から2015年末までにインドネシアに入国しようとしたオーストラリア人の小児性愛者や性犯罪履歴者100人以上がオーストラリア連邦警察から提供されたブラックリストによって入国を拒否された。

またインドネシア入国管理事務所は、2017年1〜6月に海外から入国しようとした小児性愛、児童ポルノ性犯罪歴のある常習者107人を空港などで摘発、入国を拒否した事例もある。

一方では、水際で防ぎきれず犯罪が明らかになったこともある。2016年バリ島で11人の少女に性的虐待を行ったとして、当時70歳のオーストラリア人男性が禁固14年の有罪判決を受けている。

FaceBookに会員専用幼児ポルノサイト

ソーシャルメディア「FaceBook」には「Lory Candy」という幼児ポルノの専用ページがあった。2017年3月に摘発されて現在は存在しないが、会員専用のページトで、会員になるためには「幼児ポルノ」をアップロードすることが求められた。一度メンバーになるとサイト内の約500本の幼児ポルノ動画、100枚の幼児ポルノ写真を閲覧できる代わりに、定期的に別の幼児を撮影したポルノを投稿することが求められたという。会員が一度動画や写真を閲覧するために「クリック」すると1回につき15,000ルピア(約120円)が製作者の指定口座に振り込まれるシステムだったとされる。

インドネシア警察のサイバー捜査班は、この「Lory Candy」のメンバーだった3人のインドネシア人を6月20日にジャカルタ、ジャカルタ西方のタンゲラン、スマトラ島のパレンバンでそれぞれ逮捕したことを発表した。

そしてさらにメンバーだった20人以上の行方を追っているとして「幼児ポルノ、小児性愛者がいまだに街を徘徊している」と警戒を呼びかけている。

小児性愛者は俗に「ペド」(英語のペドフィリから)と称され、世界的な闇のネットワークに63か国約40のグループが存在し、1グループは約2000人で構成されているという。米連邦捜査局(FBI)など各国の捜査機関による情報交換などで現在インドネシアをはじめ23カ国で摘発、捜査が進行中だ。

インドネシアでは2017年3月に「Lory Candy」に関連して5人を逮捕しており、今回の3人逮捕はそれに続くものだ。

2017年3月「Lory Candy」の管理者だったメンバーが逮捕されたときの記者会見 KOMPASTV / YouTube
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ジョコ・ウィドド大統領が厳罰化指示

世界最大のイスラム教徒人口を擁するインドネシアはイスラム教を国教とはせず、キリスト教、仏教、ヒンズー教なども認め「多様性の中の統一」を国是としている。とはいえその「多様性」は宗教に関するだけで、性的なマイノリティー、いわゆる「LGBT」には厳しい姿勢で臨んでおり、国際社会から人権侵害の指摘も受けている。

一方で、幼児ポルノに関してはポルノ自体が禁止されていることもあり、犯罪として処断される。また小児性愛に関してかつては寛容な一面もあったとされるが、現在は厳罰に処せられる。

その背景には現ジョコ・ウィドド大統領が、少年少女が犠牲となる犯罪に対し「犯人を厳しく処罰し、インドネシアの子供と女性を守らなくてはならない」という姿勢を打ちだし、罰則強化の大統領令まで出した強い姿勢がある。

教育界でもこうした大統領の姿勢を受けて、学校などで児童らに対し「自分の体には他人に見せること、触られることが決して許されない部分がある」と指導しているという。

インドネシア国内ではインターネットのポルノサイトへの接続は、警察などのサイバー犯罪捜査部門による監視と摘発が続いているためほとんど不可能といわれる。しかしその一方で「Lory Candy」の元メンバーらによる新たなネットでの幼児ポルノ拡大も発見されているとされ、厳しい監視とメンバー摘発の作戦が今も地道に続けられている。

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[執筆者] 大塚智彦(ジャーナリスト) PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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