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非核化

米朝首脳会談は果たして実現するか? 失敗の歴史を振り返る

2018年5月20日(日)21時00分

●2010年ー2016年、対話の崩壊

2010年3月、北朝鮮が黄海上の軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)付近で韓国海軍の哨戒船を沈没させたことが、対話再開の障壁となった。同年11月、北朝鮮が韓国延坪島を砲撃し、兵士2人が死亡したことを受け、緊張状態はさらに悪化。北朝鮮の核問題を話し合う6カ国協議の再開を呼びかける中国に対し、韓国、米国、日本は、関係改善が先だとして拒否した。

2011年には、中国やロシア、米国が、それぞれ個別に交渉再開に向けて動いた。だが12月に北朝鮮の金正日総書記が死亡。息子の金正恩氏が後継者として権力を掌握した。

北朝鮮がミサイル技術の前進を見せ、追加の核実験を行った2013年には関係国の懸念が高まったが、交渉は再開されなかった。オバマ前米政権は、北朝鮮への制裁を強化した。

●2003年ー2009年、6カ国協議

金正日総書記は2003年1月、1985年に加盟した核兵器不拡散条約(NPT)からの脱退を表明。その3カ月後、核兵器の保有を宣言した。

北朝鮮の核開発計画に平和的な解決を模索する目的で、北朝鮮のほか、韓国、中国、米国、ロシア、日本が参加する第1回の6カ国協議が北京で開催された。

2004─05年にかけて6カ国協議は断続的に開催されたが、北朝鮮はミサイル発射実験を継続した。北朝鮮側は、支援と引き換えに実験などの一時停止を申し出る一方、米国などの「敵対的行為」への懸念を表明することが、いつものパターンとなった。

6カ国協議が中断していた2006年、北朝鮮はミサイル実験を加速させる一方で、米国が核の脅威となっていると批判。当時のブッシュ米大統領が警告を発した。

2007年2月に開かれた6カ国協議で、北朝鮮は、重油提供と引き換えに原子炉を停止すると約束。また、凍結された資産2500万ドルの返還を米国に要請。6月に要求が通り、その1カ月後の再協議に道が開かれた。

だが、その年末までに核開発活動の全てを公表するという、北朝鮮の約束は果たされなかった。

2008年5月、北朝鮮は米国に、テロ支援国家の指定解除を要請。米国は同年10月にこれに応じ、北朝鮮は寧辺(ニョンビョン)核施設の取り壊しを再開した。

2009年、国連の安全保障理事会は、ミサイル実験を行った北朝鮮に対し、制裁強化を表明。それまでも査察に反発していた北朝鮮は、これを契機に6カ国協議からの離脱を表明した。

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