最新記事

中国

中国、人民網までが西城秀樹さんを悼む

2018年5月18日(金)12時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

「ターンAガンダム」の歌

「ちびまる子ちゃん」以外では「ターンAガンダム」の歌「ターンAターン」を歌った歌手として懐かしむ中国の「80后」が多い。ガンダムシリーズは中国では絶大な人気があり、「80后」で知らない者はいないだろう。コスプレでも、よく出現する。「80后」は筆者から見れば若者だが、「80后」に言わせれば、「現在の若者」はガンダムSEED世代で、「ターンAガンダムは僕らの世代です。ターンAターンを歌った西城秀樹を知らない者はいません」と、このたび新たに取材した「80后」は言っている。

サンフレッチェ広島のための応援歌

それ以外にも、サンフレッチェ広島のために応援歌を作った巨星として讃える記事もある。この記事の見出しにある「三箭」は「サンフレッチェ」の中国語表現である。

「百度百科」にも

中国にはウィキペディアに相当したような「百度百科」というのがあるが、そこにも「西城秀樹」の項目があり、彼が歌った歌のタイトルが100曲近く列挙してある。曲名は簡体字混じりながら、基本的には日本語で書いてあるので、日本人にもお分かりになるだろう。「1. 恋する季節(1972年3月25日)」から「86. めぐり逢い(2006年9月27日)」まで細かく書いてあり、興味の深さが窺われる。

中国で特に有名なのは「ローラ」や「YMCA」などが挙げられるが、西城秀樹さんの歌を中国人歌手が歌ったものが多く「あなたが聞いたことがあるあれらの歌は実は西城秀樹の歌だった」という見出しの記事もある。

中には「覚悟していた」というコメントも

中には西城秀樹さんの行動をよく観察していて、「2回も脳梗塞に罹ったのだし、その後無理してYMCAを演じる彼の姿を見ていると、ああ、もう厳しいのかなぁと覚悟していた」というコメントがあり、「改革開放って何なのかさえ分からなかった時に、彼はすでに彗星のごとく現れて輝いていた。その後、山口百恵に目を奪われたが、しかし西城秀樹がわれわれに与えたあの神秘性は、伝奇的色彩さえ帯びるほど、われわれとはかけ離れたところで輝いていた」と感慨深く述べている。

誰もが「ご冥福を祈ります」と書いていることに、感動を覚えた。と同時に、日本の文化が中国に与える影響の大きさには目を見張るものがあると、感慨深く思う。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 6
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    日本人は本当に「無宗教」なのか?...「灯台下暗し」…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 7
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中