最新記事

核・ミサイル開発

金正恩はプンゲリ核実験場を閉鎖できるか? 安全性、実効性に疑問符

2018年5月18日(金)08時17分


厄介な過去の閉鎖事例

北朝鮮は、核実験場の閉鎖により、実験を終了する一方で核兵器は保有し続けた他の核保有国の例にならおうとしている可能性があるとアナリストは指摘する。

ソ教授は、核兵器への再利用や闇市場での売却が可能な物質を北朝鮮人らが掘り起こす事態を防ぐには、トンネル閉鎖や関連施設の破壊に加え、豊渓里の実験場全体の保安が必要になると話す。

実験場閉鎖を巡る過去の事例は、時に面倒で、長期化している。

米国は1999年、カザフスタンにある旧ソ連時代の実験場を100トンのダイナマイトに匹敵する規模の爆破で破壊しようと80万ドル(約8822万円)を拠出した。

「プルトニウムの山」として知られたこのセミパラチンスク実験場は、ベルギーとほぼ同じ面積で、冷戦期には少なくとも340回の地下実験を含む456回の核実験が実施された。

同実験場の清浄化と保安には、17年の歳月と1億5000万ドルの費用がかかったと、ハーバード大ベルファーセンターの報告書は指摘している。

1960年代にサハラ砂漠で13回の地下核実験を実施したフランスは、「核実験施設は完全に破壊し閉鎖した」としており、国際原子力機関(IAEA)の2005年の報告書は、アルジェリアにあった同実験場の大半で「ほとんど残留放射性物質が検出されなかった」としている。

だが地元住人やアルジェリア政府は、放射線に汚染された岩やほこりが地下から漏れだした1962年の「ベリル事故」も含めた過去の実験によって、現在も続く環境破壊や健康被害が残されたと主張する。

中国やパキスタン、インドも、過去に地下核実験を行ったことが知られている。1989年に初期段階の核開発計画を放棄した南アフリカは、実験を行う前に地下のシャフトなどを閉鎖した。

一方米国は、ネバダ州の核実験場で少なくとも828回の核実験を実施している。1992年以降、米国の核実験は行われていないが、同実験場はいまも稼働状態だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アフガン北部でM6.3の地震、20人死亡・数百人負

ワールド

米国防長官が板門店訪問、米韓同盟の強さ象徴と韓国国

ビジネス

仏製造業PMI、10月改定48.8 需要低迷続く

ビジネス

英製造業PMI、10月49.7に改善 ジャガー生産
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 9
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中