最新記事

中朝関係

金正恩、習近平を再び利用か──日本は漁夫の利を待て

2018年5月8日(火)18時54分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

第3回南北首脳会談で「板門店宣言」に署名した金正恩委員長(左) Korea Summit Press/Reuters

金正恩委員長が習近平国家主席に会うために大連に専用機で飛んだ模様。対日微笑に傾く中国を北側に引き戻し、米朝首脳会談を前に圧力を口にするアメリカを牽制するのが主目的だろう。日本は漁夫の利を静観すべきか。

金正恩委員長が専用機で大連に飛んだ模様

5月7日午前9時、まず新唐人テレビ局が「習近平が空母視察のために大連を訪問し、金正恩と再会か」というタイトルで金正恩(キム・ジョンウン)委員長の大連訪問と習近平国家主席との再会を報じ、5月8日午前1時に、多維新聞が「大連の警備レベルアップ、金正恩が再び習近平と会談か」という見出しで同様の報道をした。

中国政府もメディアも、現在このコラムを書いている時点では、沈黙を保っている。金正恩が無事に中朝国境を越えるまで正式公表はしないだろう。いつものパターンだ。

習近平が中国初の国産空母の試験出航儀式に参加するであろうという情報は、かなり前から把握していた。これは金正恩の再訪中とは関係なく動いていたことだ。

日中韓首脳会談の前に

金正恩がそれに合わせて急いだのは、明日9日の日中韓首脳会談前に習近平と会い、李克強首相が日中韓首脳会談で北朝鮮に不利になるようなことを言わないようにさせるのが目的の一つだと考えていいだろう。

金正恩自身が「中国外し」を目的とした、朝鮮戦争休戦協定から平和協定への協議で「米朝韓による3者会談」を提唱している。そのため中国は日本への微笑み外交を、北朝鮮への見せしめとして進めようとしている。

日中首脳同士が電話会談をするという、政権誕生以来初めてのことを、習近平はやってのけた。

そうなると今度は、「ひょっとしたら習近平がトランプ大統領に近づくかもしれない」と、金正恩は怖いのだろう。

米朝首脳会談を前に

米朝首脳会談を前にして、北朝鮮の対米批判が再開している。

アメリカが「圧力が効いたから、北朝鮮が対話路線に切り替えたのだ」と言っているからだ。

中国は「圧力が原因ではない」と主張しているので、そのように主張してくれている兄貴分に、「アメリカが、圧力のせいだって言うんだよ。違うって言ってくれよ」とせがみに行ったと考えていい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルが対円・ユーロで上昇、FRB議長

ビジネス

米国株式市場=まちまち、金利の道筋見極め

ビジネス

制約的政策、当面維持も インフレ低下確信に時間要=

ビジネス

米鉱工業生産、3月製造業は0.5%上昇 市場予想上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 2

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア黒海艦隊「主力不在」の実態

  • 3

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無能の専門家」の面々

  • 4

    韓国の春に思うこと、セウォル号事故から10年

  • 5

    中国もトルコもUAEも......米経済制裁の効果で世界が…

  • 6

    【地図】【戦況解説】ウクライナ防衛の背骨を成し、…

  • 7

    訪中のショルツ独首相が語った「中国車への注文」

  • 8

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    「アイアンドーム」では足りなかった。イスラエルの…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 3

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...当局が撮影していた、犬の「尋常ではない」様子

  • 4

    ロシアの隣りの強権国家までがロシア離れ、「ウクラ…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    NewJeans、ILLIT、LE SSERAFIM...... K-POPガールズグ…

  • 7

    ドネツク州でロシアが過去最大の「戦車攻撃」を実施…

  • 8

    「もしカップメンだけで生活したら...」生物学者と料…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    猫がニシキヘビに「食べられかけている」悪夢の光景.…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    巨匠コンビによる「戦争観が古すぎる」ドラマ『マス…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中