トランプ政権「TPP復帰」はあり得るか? その条件とリスク
米国がTPPに復帰するには
参加11カ国は当初の協定内容を変更してTPP11に合意しており、トランプ大統領が「より良い合意」を求めると発言している以上、単なる「再加入」では済まないとみられる。
「現在の条項をベースに交渉を再開して、(当初盛り込まれていた米国の)要望を再び組み入れれば合意に至るとは、極めて考えにくい」と、ウェリントンを拠点とするコンサルタントで、ニュージーランド政府の通商交渉担当だったチャールズ・フィニー氏は言う。
「交渉にはおそらく相当の時間がかかる。また、違う名称が採用され、TPPとは大きく異なる内容になるだろう」
CPTPPは、来年初めにも発効するとみられている。米国が再交渉に臨めるのは、早くてもそのころだ。参加11カ国がすべて新規参入国を承認しなければならず、各国が拒否権を持っている。
より良い合意とは何か
参加11カ国は、従来TPPのうち、約20条項を棚上げした。その多くが、一部医薬品の知的財産(IP)保護強化や、著作権保護期間の延長や、急送便の障壁緩和など、米政府の要望に応じて盛り込まれたものだ。
TPP11の正式文書は584ページ。米国も参加した最初のTPPは622ページだった。削除されたページのうち、18ページがIPの章だった。IPは、米政府が特に重要とみなし、交渉が難航した分野だ。
米国の復帰には、日本を含めた他の参加国にとっての「弱点」となる分野の再交渉が必要になるだろう。例えば、ピックアップトラックに対する関税や、自動車の原産地認定に、どの程度の割合以上の国内製造部品を条件とすべきか、などが含まれる。日本は、タイなど参加国以外の国で製造した部品調達を維持したい方針だ。
このほかにも、米政府は農業分野でさらなる譲歩を他国に迫る可能性がある。トランプ氏が2016年の大統領選で勝利した州の多くは農業州だ。日本が、関税を守る重要品目の1つと位置づけているコメは、最も困難な交渉分野になる可能性がある。
技術的には、TPP11で凍結された条項を復活させることは難しくない。だが、「改善」させるとなると、話は別だ。
「凍結されたことには意味がある。(TPP11)参加国は、これらを削除することもできたが、そうしなかった」と、シンガポールを拠点とするシンクタンク、アジア・トレード・センターのデボラ・エルムズ氏は指摘。「問題は、米国の現政権が、オバマ前政権が携わったものなら何でもやり直したがることだ。少なくとも現段階において、11カ国に複雑な再交渉を行う意欲があるとは思わない」
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
[シンガポール/ウェリントン 16日 ロイター]


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