最新記事

韓国事情

韓国で後を絶たないパワハラ事件 SNSでさらに表面化

2018年4月20日(金)15時10分
佐々木和義

「ナッツ・リターン事件」の妹のパワハラが発覚 Youtube

<「ナッツ・リターン事件」の妹のパワハラが発覚するなど、後を絶たない韓国のパワハラ体質社会にも変化が見られる>

大韓航空を傘下に持つ韓進財閥グループのKALホテルネットワークの社長に、元大韓航空副社長の趙顕娥(チョ・ヒョンア)氏が就任した。趙顕娥氏は韓進グループの趙亮鎬(チョ・ヤンホ)会長の長女で、2014年12月に起きたいわゆる「ナッツ・リターン事件」を機に副社長を辞任して以来、3年4カ月ぶりの経営復帰となった。

同氏は米ニューヨークの空港で自社旅客機の客室乗務員のナッツの出し方に腹を立て、滑走路に向かっていた機体を引き返させて客室サービス責任者を降機させたことから航空保安法上の航空機航路変更などの罪で逮捕・起訴され、2017年12月21日の最高裁で懲役10カ月、執行猶予2年が確定している。

趙顕娥氏の実妹の趙亮鎬(チョ・ヤンホ)氏も2018年3月にパワハラ事件を起こし、警察が捜査を開始した。

大韓航空の広告担当専務の趙亮鎬氏は、3月16日の会議中に自分の質問に対する明確な回答がなかったとして広告代理店の職員に暴言を吐き、水が入ったコップを投げつけた疑惑がもたれている。ハワイで生まれた同氏はアメリカ国籍を所持しており、警察は海外逃走を防止するため、4月18日に出国停止を申請した。

相次ぐパワハラ事件

韓国では近年、財閥オーナー家、特に3代目の横暴が話題になることが多い。財閥など大手企業等の創業者は苦労して会社を大きくし、2代目は親を見て育ったが、3代目の多くが子供の頃から王族のようにもてなされてきた。そうしたこともあって入社後も傍若無人になりやすいのか、2017年1月にはハンファ財閥グループ会長の3男が飲み屋で暴力事件を起こして逮捕されている。

また、大企業社員によるパワハラも後を絶たず、2013年には乳業会社大手である南陽乳業の営業社員が在庫を代理店主に押しつけながら暴言を吐いた音声がソーシャルネットワーク(SNS)で公開され、酒造会社ペサンミョン酒家の代理店主は会社からの買い取り要求に起因する借金を苦に自殺した。

このように、立場が上のものを「甲」、立場が弱いものを「乙」とし、「甲」から「乙」に対する横暴が次々に表面化したことで、「甲乙問題」として社会問題に発展した。

上下関係を重視する慣行に起因

また2013年5月のソウル新聞によると、アルバイトの90%以上がパワハラを受けた経験があるという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

エヌビディア決算に注目、AI業界の試金石に=今週の

ビジネス

FRB、9月利下げ判断にさらなるデータ必要=セント

ワールド

米、シカゴへ州兵数千人9月動員も 国防総省が計画策

ワールド

ロシア・クルスク原発で一時火災、ウクライナ無人機攻
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋肉は「神経の従者」だった
  • 2
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 3
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 4
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 5
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 6
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    株価12倍の大勝利...「祖父の七光り」ではなかった、…
  • 9
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 10
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 6
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 7
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 8
    「このクマ、絶対爆笑してる」水槽の前に立つ女の子…
  • 9
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 10
    3本足の「親友」を優しく見守る姿が泣ける!ラブラ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中