最新記事

核廃棄

史上初の米朝首脳会談、北朝鮮の悲願は米政権のリスクに

2018年3月17日(土)13時43分

3月9日、北朝鮮の指導者は、これまで少なくとも過去20年に渡り、米国大統領との直接会談を求めてきた。写真は核兵器開発者と話す金正恩氏。2016年3月提供(2018年 ロイター/KCNA)

北朝鮮の指導者は、これまで少なくとも過去20年に渡り、米国大統領との直接会談を求めてきた。

予期せぬ形で米朝首脳会談の実現可能性が浮上する中、北朝鮮が長年切望してきた政治ショーの場を、同国に非核化を促す意味ある機会に変えるだけの専門知識が、主要ポストが空席だらけのトランプ政権には欠けているのではないか、とアナリストは危惧している。

韓国の政府高官は9日、トランプ大統領が、前提条件なしに5月までに北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と会うことに直ちに同意したと語った。北朝鮮に対する外交的アプローチを支持してきた人々からも、米政権が十分な準備期間なしに首脳会談を急ごうとしているのではないかとの懸念の声が上がっている。

米朝トップが史上初めて顔を合わせる、今回のような首脳会談では、少なくともいくつかの具体的な合意が両国間で成立した後に設定されるのが一般的だ。北朝鮮政府高官と非公式協議を行った経験があるシンクタンク「ニュー・アメリカ財団」のスザンヌ・ディマジオ上級研究員はそう語る。

「周到に準備した上で、細心の注意をもって遂行されなければならない」と、ディマジオ氏はツイートした。「さもなければ、中身のないショーに終わるリスクがある。現段階では、金正恩が内容やペースを設定し、トランプ政権がそれに対応している。米政権は、早急に動いてこの構図を変えなくてはならない」

ティラーソン米国務長官はこれまで北朝鮮を巡り、ホワイトハウスから大っぴらに見解の相違を露呈されることが多かった。8日も、米朝首脳会談の実施見通しが発表されるほんの数時間前に、ティラーソン氏は「われわれは交渉入りには程遠いところにある」と発言していた。

トランプ政権で韓国や東アジア関連の主要ポストに就いているのは、経験豊富なキャリア外交官たちだ。だが、その多くは「代行」の立場で、空席のままのポストも多い。

北朝鮮担当特別代表だったジョセフ・ユン氏は3月初めに退任した。トランプ氏は、まだ韓国大使を指名していない。

「トランプ大統領と金氏の会談には、リスクとチャンスの両方が潜んでいる。米側は、極めて周到に準備し、何の達成を目指し、見返りに何を提供する用意があるのか、明確にする必要がある」と、米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のボニー・グレイザー氏は語る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、ガリウムやゲルマニウムの対米輸出禁止措置を停

ワールド

米主要空港で数千便が遅延、欠航増加 政府閉鎖の影響

ビジネス

中国10月PPI下落縮小、CPI上昇に転換 デフレ

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 2
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 9
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 10
    「豊尻」施術を無資格で行っていた「お尻レディ」に1…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中