最新記事

新冷戦

牙を剥くロシア「500年続いた西側の世界支配はいま終わる」

2018年3月16日(金)17時46分
トム・オコーナー

クリミア併合4周年にあたる3月14日、クリミアの港町セバストポリの人々に「強いロシア」を売り込むプーチン Maxim Shemetov-REUTERS

<プーチン再選確実の大統領選を控え、ロシアと西側の対立が激しくなっている。国内で暗殺未遂事件を起こされたイギリスは激怒し、ロシアに甘いとみられてきたトランプ米大統領も矢継ぎ早にロシア対抗策を打ち出し、まるで冷戦期のようだ>

ロシアは、アメリカとその同盟国からのいかなるに「最後通告」にも応えることを拒否し、「西側が主導する世界秩序はもはや終わった、今後は独自の外交路線を追求する」と宣言。戦いの舞台は世界各地から宇宙空間にまで至る。

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が軍事力や政治的影響力の拡大を目指すなか、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカなどの西側諸国はロシアの内政干渉を批判してきた。だがロシア側はこれを一蹴。セルゲイ・ラブロフ外相は、最近の対ロ投資フォーラムで、ソ連崩壊後の混乱を乗り越えて再び世界の大国に上りつめたロシアに「過剰な反応をみせる」国が多い、とうそぶいた。

「わが国はいかなる相手との対立も望んでいない。公正な条件のもと、すべての国々と協力したい」と、ラブロフは国営タス通信に語った。「相互尊重に基づき、利害の均衡を図りつつ、双方にとって受け入れ可能なアプローチを取ることが肝心だ」

ラブロフは、最近のロシアと西側の緊張の原因は「過去500年にわたる西側の世界支配が終わりつつあるにもかかわらず、頑なにこれを受け入れないアメリカとその同盟国の姿勢にある」と指摘する。世界を支配する何世紀分もの習慣がこびりついている国々にとっては、今の世界情勢の変化は受け入れがたいのだろう、と。

イギリス国内でまたスパイ暗殺

西側諸国とロシアの関係悪化を示す最新の事例が、ロシアの元スパイの毒殺未遂事件だ。2010年にイギリスに亡命したセルゲイ・スクリパリは今月初め、英南部のソールズベリーのベンチで娘とともに意識不明で発見された。英政府は、犯行に使われた猛毒の神経剤ノブチョクは旧ソ連によって開発されたものだとして、ロシアの外交官23名を国外退去にした。

ロシア政府はこれに対し「前代未聞の許し難い挑発」と激しく反発。ラブロフは「すぐに対応措置を執る」と言った。

アメリカも、ロシアが2016年の大統領選挙に干渉し、ドナルド・トランプ現大統領の当選をひそかに後押ししたとして前オバマ政権の末期に外交官の国外退去処分に踏み切った。ロシアもトランプも疑惑への関与を否定しているが、両国の関係はその後も改善していない。

軍事的にも、関係は険悪化しつつある。ロシアが2014年にウクライナのクリミア半島を併合した後、アメリカ主導の軍事同盟であるNATO(北大西洋条約機構)は、ロシアとの国境地帯に配備する戦力を増強した。ロシアは、アメリカが全世界的なミサイル防衛システムでロシアを封じ込めようとしていると主張し、冷戦時代にも似た軍拡競争が復活しつつある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国人民銀、最優遇貸出金利据え置く見通し 6カ月連

ビジネス

アングル:米政府閉鎖解除で統計発表再開、12月利下

ビジネス

マスク氏とフアン氏、米サウジ投資フォーラムでAI討

ビジネス

米の株式併合件数、25年に過去最高を更新
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 10
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中