最新記事

日本企業

仮想通貨業者の新団体、ブロックチェーン企業は未加入 自主規制は可能か?

2018年3月3日(土)13時35分


自主規制への長い道のり

新団体は、早期に自主規制団体としての認定を得られるよう申請を出す方針。しかし、業界団体を自ら律する体制を構築するのは容易ではない。

金融機関などは業態ごとに業界団体を作り、団体が業界を代表して金融庁などと交渉や連絡調整役を担う。しかし、自主規制団体には「当局より処分が遅い、軽いとの批判がついてまわる」(ある自主規制団体の関係者)との声が出ている。

東芝<6502.T>の不正会計問題で、同社の監査を担当していた新日本監査法人に公認会計士協会が処分を出したのは2017年7月。金融庁の行政処分から1年7カ月後のことだ。

証券会社の自主規制団体である日本証券業協会についても「昔は過怠金の金額が小さく、当局の処分の後追いとの批判があった」(野村総合研究所の大崎貞和主席研究員)という。しかし、大崎氏は、日証協の取り組みが近年、能動的になってきたと評価する。

日証協の源流は、戦前の1940年にさかのぼる。「長年、業界の親睦団体みたいなものだった」(大崎氏)という。しかし、2000年から日証協会長は所属を離れて協会の仕事に専念する「専任会長」に変更。専任会長になって中立性が向上した。

任期も1―2年で交代していたが、専任会長はいずれも3年以上務めている。2004年には、自主規制機能と業界活動とを分離し、それぞれ独立して運営する組織体制に変更。2008年6月には過怠金の上限額を原則1億円から5億円に引き上げた。

自主規制ルールにもとづいておこなう会員証券会社への処分は、金融庁による行政処分に劣後するケースがほとんどだが、2017年4月には、カブドットコム証券に対して、日証協だけが処分した。

強い仲間意識

コインチェックから巨額の仮想通貨が流出した1月26日。会見に臨むコインチェックの和田晃一良社長らに対し、複数の取引所幹部がSNS上に励ましのメッセージを記した。ある取引所のトップは、ネットで生中継される会見を見ながら、和田氏らと業界発展のために苦労してきたことを思い、涙を流していたという。

仲間意識を排除し、自主規制ルールが求める最低限のレベルに達しない事業者には処分や、場合によっては退場宣告ができるのか。業界の信頼回復に向け、新生・業界団体の本気度が問われている。

(和田崇彦 編集:田巻一彦)

[東京 2日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中