最新記事

トランプ政権

トランプ信者が外交トップへ CIA長官から国務長官になるポンぺオの横顔

2018年3月19日(月)16時54分

3月13日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との前例のない首脳会談を準備する中で、次期米国務長官に指名されたポンぺオCIA長官(写真)には、トランプ大統領が聞きたがるような意見しか言わない傾向があると、政府関係者やアナリストが危惧している。2017年、ワシントンにある国務省ビル(2018年 ロイター/Joshua Roberts)

マイク・ポンペオ米中央情報局(CIA)長官は、重要な国家情勢のブリーフィングを毎朝行い、公の場では称賛し、北朝鮮からイランに至るさまざまな問題についてその強硬路線を支持することにより、トランプ大統領との個人的な絆を育んできたのかもしれない。

だが、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との前例のない首脳会談を準備する中で、次期国務長官に指名されたポンぺオ氏には、大統領が聞きたがるような意見しか言わない傾向があると、政府関係者やアナリストが危惧している。

一方、元共和党下院議員であるポンぺオ氏の支持者らは、解任されたティラーソン国務長官の後任として上院の承認を得たなら、大統領の信頼、政府での経験、議会や官僚機構の内部知識といった強みを、米国の外交トップという新たな役割で生かすことができる、と主張する。

また、ティラーソン氏はトランプ大統領と意見が対立することが多かったが、大統領とウマが合うこともポンペオ氏にとっての強みになるだろう。海外の指導者からも、大統領の代役として信頼性が高いと受け止められる可能性が高い。

とはいえ、大統領に忠実なタカ派のポンペオ氏が、トランプ政権の外交姿勢をさらに強硬にすることで、より穏健な意見が大統領執務室で表明されにくくなり、北朝鮮を相手とするデリケートな外交努力を困難にするのではないかとの懸念も残る。

ポンペオ氏の知性や、より堅実な秘密諜報作戦を主張する点に好印象を抱いている情報機関の当局者もいるが、一部からは、ポンペオ氏が直接大統領に行うブリーフィングを利用して、ありのままの評価ではなく、恣意的に選択した情報を提供してきたとの声も上がっている。

例えば、ポンぺオ長官は、2016年の米大統領選に対するロシアの介入に関する情報機関の調査結果を軽視し、イランが2015年の核合意を遵守していることよりも、同国のミサイル開発や中東地域における複数の紛争での役割を強調する傾向があった、と一部当局者は語る。

「ポンペオ氏は、記憶にある限り、最も政治的なCIA長官だった」と政権当局者は匿名を条件に語った。「CIA内部の多くの専門家のやる気をそぐような形で、政治的案件に首を突っ込んでいった」

「同省のモラルも打撃を受けおり、それは分析部門から広がり始めた。ここの職員のなかには、ポンぺオ氏が、情報機関がどう評価しているかではなく、トランプ氏が何を聞きたがっているかに合わせて、PDB(大統領向けデイリーブリーフィング)の一部を調整しているのではないかと懸念する声もあった」と同当局者は語った。

だが、国務長官に昨年抜擢された時点で政治経験がなかったビジネス界出身のティラーソン氏とは異なり、ポンペオ氏は中央政界の流儀をよく心得ている。

54歳のポンペオ氏は、保守的な傾向も幸いして、連邦議会やホワイトハウスとうまくやっていける可能性が高いと現旧当局者はみている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、レアアース輸出ライセンス合理化に取り組んでい

ビジネス

英中銀、プライベート市場のストレステスト開始へ

ワールド

ウクライナ南部に夜間攻撃、数万人が電力・暖房なしの

ビジネス

中国の主要国有銀、元上昇を緩やかにするためドル買い
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国」はどこ?
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 8
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 9
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 10
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中