最新記事

北朝鮮問題

広がる「工作員妄想」~三浦瑠麗氏発言の背景~

2018年2月14日(水)20時40分
古谷経衡(文筆家)

対テロ訓練で犯人を取り押さえる警視庁の警察官(2017年6月) Issei Kato-REUTERS

根拠不明な「スリーパーセル」

さる2018年2月11日に放送された『ワイドナショー』における国際政治学者・三浦瑠麗氏発言が物議を醸している。番組放送中に、三浦氏が「スリーパーセル」と称される北朝鮮の暗殺部隊(工作員)が、日本の大都市部、特に大阪に潜んでいる、と断定したものである。番組中の詳細な発言は以下の通り。


(前略)......(三浦)実際に戦争が始まったら、テロリストが仮に金正恩さんが殺されても、スリーパーセルといわれて、もう指導者が死んだ、っていうのが分かったら、一切外部との連絡を絶って、都市で動き始める、スリーパーセルというのが活動される、活動すると言われている。

(同席者)普段眠っている、その暗殺部隊みたいのが......

(三浦)テロリスト分子がいるわけです。それがソウルでも、東京でも、勿論大阪でも。いま結構大阪がヤバいって言われていて。

(同席者)潜んでいるって事ですか?

(三浦)潜んでます。というのは、あの、いざというときにその最後のバックアップですよ。そうしたら首都を攻撃するよりかは、正直他の大都市が狙われる可能性もあるので。東京じゃないからという風に安心はできない。というのがあるので、正直我々としては核だろうがなんだろうが戦争して欲しくないですよアメリカと。
出典:ワイドナショー(2018/2/11、強調筆者)

北朝鮮の特殊工作員が常に日本の大都市部に潜んでいて、有事の際には事前の想定通り、独自に日本で破壊活動を行う・・・というある種の観念は、小泉訪朝に揺れた、ゼロ年代中盤におけるネット右翼の典型的対北朝鮮工作員観をトレースしたモノで、これを私は「工作員妄想」と名付けている。

小泉政権下、電撃的な二度の小泉訪朝と拉致被害者の部分帰国は、その報道の過程において北朝鮮工作員が拉致被害者を主に日本海沿岸の各県の海岸等から連れ去ったことが明らかになり、世論は身近な日常の中で北朝鮮工作員が存在し、跳梁跋扈して拉致事件を起こしたことに驚愕した。そして実際、「5人生存8人死亡」等の北当局の一方的な発表に、多くの日本人が憤慨したことは記憶に新しい。

1970年代から80年代にかけて、続発した謎の失踪事件と北朝鮮工作員との関わりについて、日本の公安当局は早い段階から一部でその相関を予測していたと言うが、実際に北朝鮮工作員による拉致事件の全容が明るみになり、政治課題として俎上にあがったのはずっと後になってからのことである。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国SMIC、第4四半期は60.7%増益 予想上回

ビジネス

米関税、ユーロ圏物価を下押し 利下げで相殺可能=E

ビジネス

フランス産ワイン・蒸留酒輸出、貿易摩擦の影響で3年

ビジネス

韓国当局、個人情報流出のクーパンにシステムの脆弱性
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 2
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...周囲を気にしない「迷惑行為」が撮影される
  • 3
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 6
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 7
    変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本の…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    衆院選で吹き荒れた「サナエ旋風」を海外有識者たち…
  • 10
    「二度と見せるな」と大炎上...女性の「密着レギンス…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 7
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 8
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中