最新記事

エネルギー

米国シェール革命が塗り替える「石油勢力図」 減産OPECの間隙つく

2018年2月19日(月)19時09分

8日発表された中国の公式統計によれば、米国からのエネルギー輸入増大に伴い、中国の1月対米貿易黒字は、前月の255億5000万ドルから、1月には218億9500万ドルに縮小した。

米国の中国向けエネルギー輸出額は、OPEC諸国による同月の中国向け石油輸出額が97億ドルだったことに比べれば、依然としてかなり小さい。だが米国産石油はすでにサウジアラビアやロシアと言った国々が支配していた市場に食い込みつつあり、今後の競争ははるかに激しくなる様相をみせている。

「米国産原油は、われわれの供給基盤を補完している」と、中国国有石油大手、中国石油化工(シノペック)の精製部門に所属するマネジャーは匿名で語った。同マネジャーによれば、シノペックは今年、米国産原油の発注を増やす見込みだという。

米国の輸出入は逆転

中国の原油輸入量は1月、過去最高の957万バレル/日に達したことが、8日に発表された公式統計で明らかになった。

一方、米国の輸入量は、2005年に記録した最高1250万バレル/日から大きく下落し、400万バレル/日を下回っている。

12月と1月の平均量をベースに計算すると、米国産の石油とガスの中国向け輸出額は、年間約100億ドルに相当することになる。日本、韓国、台湾向けを合わせると、この数字は2倍に膨れ上がる。

インフラ面での制約さえなければ、米国からの輸出はさらに拡大するだろう。だが、米国には、いわゆるVLCC級の巨大タンカーに対応する港湾が1カ所もない。

この問題に対処するため、メキシコ湾で最大級の施設であるルイジアナ・オフショア・オイルポート・サービス(LOOP)では、近い将来VLCC級に対応できるよう拡張を進めている。

原油価格への影響

中国にとって米国産石油の主な魅力は、その価格だ。シェール開発ブームのおかげで、米国産石油は他の石油に比べて低価格になっているからだ。

今のところ、米国産の原油価格は1バレルあたり約60ドル50セントで、他国産原油のほとんどが価格設定基準としているブレント原油よりも1バレルあたり約4ドル程度安い。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン、イスラエルへの報復ないと示唆 戦火の拡大回

ワールド

「イスラエルとの関連証明されず」とイラン外相、19

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、5週間ぶりに増加=ベー

ビジネス

日銀の利上げ、慎重に進めるべき=IMF日本担当
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 4

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 5

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 9

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中