最新記事

動物

猫の利き手は性別で決まる? 利き手を探る調査で判明

2018年1月26日(金)19時00分
松丸さとみ

猫の利き手は性別で決まる? 101cats-iStock

どちらの前足を多く使うか

これまで、愛猫の「利き手」について考えたことはあるだろうか? 人間の場合は90%が右利きとされているが、猫の利き手を研究した大学の研究者によると、利き手の違いを作る最大の要因は、性別のようだ。アイルランドにあるクイーンズ大学のデボラ・ウェルズ博士のチームが研究し、学術誌「アニマル・ビヘイバー」に掲載した。

ウェルズ博士のチームは、44匹のネコ(オス24匹、メス20匹)を使って、利き手について研究した。博士によると、これまでもタスクを与えて調べたデータは存在したが、猫が自然な状態で行動する様子を調べたデータはなかった。そこで、自然な状況でのデータ収集と、タスクを与えてのテストを行うことにした。

データ収集もタスクを与えてのテストも共に、猫の自宅で行われた。自然な行動のデータ収集は、猫が自宅にいて取る行動を、飼い主が3カ月にわたって観察して記録する、という方法が取られた。寝る時、階段を降りる時、物をまたぐ時の3つの状況において、左右のどちらの手(前足)を優先的に使うか(寝る時はどちらを下に向けるか)を調べるのだ。

また、タスクを与えるテストでは、3段構造になっている猫用の餌タワーを使った。タワーには3つの穴が開いており、餌を取ろうとしてこの穴の中に手を入れる時に左右どちらを使うかを記録した。猫が飽きないよう1日15回を上限に、手を出して反応した数が計50回になるまでデータの収集が続けられた。

オスメスで違う利き手と使う脳

結果は、猫の大部分にとって「よく使う利き手」があることが分かったが、右利きと左利きの多さは同じくらいだった。また、自然な行動で集まったデータとタスクを与えてのテストで得たデータは、正の相関関係だった。ただし、寝る時にどちらを下にするかは、特に好みや「利き側」は見られなかったという。

そして、左右どちらを好むかは、猫の性別によって大きな違いがあることが分かった。オス猫は左手、メス猫は右手を使う傾向が強かったのだ。発表された記事によると、性別によって左右の利き手に違いが出るのは、これまでも犬や馬の研究で指摘されていたという。ただし、今回実験に参加した猫は44匹ともすべて不妊手術を受けているため、「ある意味、驚きだ」と研究チームは述べている。

動物のさまざまな種において、オスとメスで脳に違いがあることがこれまでも指摘されてきた。そのため、今回の実験で分かった猫の利き手が性別によって違うことについても、脳の違いが考えられるという。また、ホルモンの影響もある可能性があるというが、いずれにせよ現段階では詳しいことははっきり分かっておらず、「さらなる研究が必要だ」としている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米、中国製半導体に関税導入へ 27年6月適用開始=

ビジネス

米耐久財受注、10月は2.2%減に反転 コア資本財

ワールド

米当局、中国DJIなど外国製ドローンの新規承認禁止

ビジネス

米GDP、第3四半期速報値は4.3%増 予想上回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    砂浜に被害者の持ち物が...ユダヤ教の祝祭を血で染め…
  • 6
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 7
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 8
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中