最新記事

アメリカ社会

孤独なオタクをのみ込む極右旋風

2017年12月15日(金)17時30分
ウィリアム・ヒックス

ジュニアスはフィラデルフィアでのイベントの前、オルト・ファーリーたちからオンライン上で脅されていた。「首の骨を折りたい」という書き込みもあった。ジュニアスの個人情報を探り出して、ネット上にさらすことを目的とするフォーラムまで出現した。オルト・ファーリーを狭量なファシストと批判したことが怒りを買ったのだ。

ジュニアスは脅しにおじけづくことはなかったが、白人至上主義者に取り込まれるファーリーたちが増えるのではないかと案じている。「(ファシストたちは)孤独な白人男性に目を付ける」というのだ。

殺害予告まで飛び出した

互いの自由を尊重するのが旨のファーリーたちだが、ことオルト・ライトの思想をめぐってはそうはいかない。

オルト・ファーリーの一員であるヤギのダイアニシャスはフィラデルフィアのイベント前、「サヨク嫌いの仲間たちと会うのが楽しみだ」とSNSに記した。しかし、そうした仲間たちとの接触は、ほぼ会場外で行わなくてはならないと分かっていた。脅迫的な言動を理由に、ダイアニシャスと友人数人は入場を禁止されていたからだ。

ダイアニシャスは105ドルを支払ってアーティストに依頼し、自分の「ファルソナ」(ファーリーとしてのキャラクター)が登場する作品を制作させていた。そのファルソナがヘリコプターから、ジュニアスと2人のファーリーを下に突き落とす場面を描いたものだ。

magw171215-us03.jpg

ダイアニシャスがオルト・ライトの指導者に送った作品 Courtesy of Dionysius

この作品内でヘリから突き落とされた1人がタスマニアデビルのディオだ。4月のコロラド州デンバーのイベントにダイアニシャスの仲間たちが乗り込むと知ったディオは、「ナチスどもに一発お見舞いするのが待ち切れない」とツイッターに書き込んだ。すると、匿名のファーリーから「おまえが撃たれるほうがずっと面白い」というコメントが書き込まれた。

これ以降、ディオと家族はひっきりなしに脅しを受けるようになった。「レイプして殺してやる」とか、ユダヤ系であるディオが祖父を亡くした後には「ユダヤ野郎が1人減ったぞ!」と書かれたりもした。

そこでディオは、ゲーム愛好家がよく用いるチャットサービス「ディスコード」上のオルト・ファーリーのグループに何カ月も潜入。この夏、そこで交わされた1カ月分のやりとりを暴露した。それによれば多くの発言は人種差別的で、殺し屋を雇ってディオを殺そうと提案するファーリーまでいた。

しかし、このチャットグループのサーバーを管理する有名オルト・ファーリー、通称レン・ギルバートに言わせれば、メンバーの大半は白人至上主義者でもなければ、ナチス思想の信奉者でもない。「オルト・ファーリーとは、ファーリーの中で右寄りの人たちを表す大きなくくりにすぎないと思っている」と、本誌に語っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮から2発の弾道ミサイル、韓国大統領が4日から

ワールド

トランプ氏、対キューバ軍事行動検討していない キュ

ワールド

米国が当面ベネズエラ「運営」、トランプ氏会見で表明

ワールド

拘束のベネズエラ大統領、米国に移送 NY州の空港到
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...強さを解放する鍵は「緊張」にあった
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    2026年の節目に問う 「めぐみの母がうらやましい」── 韓国拉致被害者家族が見る日韓の絶望的な差
  • 4
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 5
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 6
    「断食」が細胞を救う...ファスティングの最大効果と…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    感じのいい人が「寒いですね」にチョイ足ししている…
  • 9
    松本清張はなぜ「昭和の国民作家」に上り詰めたのか…
  • 10
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 3
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 4
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 5
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 8
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 9
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 10
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中