最新記事

ロシア疑惑

トランプを追い込む特別検察官の秘策

2017年12月11日(月)12時05分
ジェッド・シュガーマン(米フォーダム大学法学大学院教授)

フリンの捜査協力はロシア疑惑の捜査を一変させる可能性がある Jonathan Ernst-REUTERS

<フリン前大統領補佐官との司法取引で捜査協力を引き出し、沈黙するロシア疑惑関係者の「寝返り」を狙う>

トランプ政権のロシア疑惑を捜査するムラー特別検察官は12月1日、フリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)をFBIに虚偽の供述をした罪で訴追したと発表。同じ日にフリンは法廷で有罪を認め、ムラーに全面協力する意向を示した。

この件で有罪を認めて捜査に協力する見返りに、それ以外の罪については訴追を免れるという条件で司法取引に応じた格好だ。フリンがトランプ本人を含む政権中枢に不利な証言を行うことに同意したのは間違いないとみられる。

この司法取引のポイントは3つある。トランプの恩赦の威力(つまり関係者に沈黙を守らせる力)を無効化するムラーの戦略の一環であること。次に、トランプが「司法妨害」に問われる可能性が一気に高まったこと。そしてトランプ本人に加え、ペンス副大統領も厄介な立場に追い込まれたことだ。

フリンは司法取引に応じたが、大統領の恩赦の対象になるのは連邦法違反の犯罪だけだ。ロシア疑惑に関連してこれまでに起訴された3人(大統領選でトランプ陣営の選対本部長だったポール・マナフォートとそのビジネスパートナーだったリック・ゲーツ、トランプ陣営の元外交顧問ジョージ・パパドプロス)の場合と同様、州法レベルで罪に問われる可能性はまだ残っている。

副大統領も司法妨害?

11月10日のウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によると、フリンは息子と共に、トルコのエルドアン大統領の政敵で、16年7月のクーデター未遂事件の首謀者としてトルコ政府から身柄引き渡しを要求されているフェトフッラー・ギュレン師を超法規的に「強制送還」し、1500万ドルもの大金をせしめる計画を練っていたとされる。これが事実なら、現在ギュレン師が住むペンシルベニア州の検察当局は贈収賄と誘拐計画の2つの罪でフリンを訴追できる。

トランプの司法妨害については、本人が既にテレビ番組で妨害の意図を認めている。FBIのコミー長官(当時)の解任理由の説明は、大統領選のトランプ陣営とロシアの関係を捜査されるのを阻止するためだったと告白したも同然だ。更迭された側のコミーも上院情報特別委員会で、トランプはフリンを守ろうと繰り返し介入したと証言した。

そして今回、フリンは虚偽の供述の件で有罪を認め、ロシア側との接触を指示した人物としてトランプの娘婿クシュナー上級顧問の名前を出したとされる。今後ムラーの捜査に協力する過程では、おそらくもっと多くの事実を話すだろう。それにつれて大統領の司法妨害に対する世論の風当たりも強まり、ロシア疑惑を審理する法廷や弾劾裁判を開く権利を持つ議会への影響も大きくなるはずだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-米政府、海上停滞中のイラン産原油売却を容認 

ワールド

米国防総省、パランティアのAIを指揮統制システムに

ビジネス

米ユナイテッド航空 、秋まで運航便5%削減 中東情

ワールド

米、イラン戦争の目標達成に近づく=トランプ氏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    メーガン妃、親友称賛の投稿が波紋...チャリティーの場でにじんだ「私的発信」
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    「日本人のほうが民度が低い」を招いてしまった渋谷…
  • 5
    BTSカムバック公演で光化門に26万人、ソウル中心部の…
  • 6
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 9
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 10
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 6
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 9
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 10
    ズボンを穿き忘れてる! 米セレブ、下を穿かず「目の…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中