最新記事

イラン

イラン軍艦がメキシコ湾へ プレゼンス拡大でアメリカに対抗

2017年11月28日(火)19時20分
トム・オコナー

ペルシャ湾で出くわしたイラン革命防衛隊の艦艇(左)と米海軍の哨戒艇 U.S. Navy/REUTERS

<中東の盟主として台頭しつつあるイランが、イラン包囲網を画策するアメリカとサウジアラビアとイスラエルに対抗するため世界の海に出ようとしている>

イランの軍艦がペルシャ湾から世界中の海を渡り、米南部とメキシコ北東部に挟まれたメキシコ湾を航行する準備を進めている。

イランを敵視する米トランプ政権に対抗し、軍事力の増強と近代化を目指しているイランでは、海軍司令官に就任したフセイン・カンザディが11月22日に記者会見を開き、イランの複数の軍艦が間もなく大西洋とメキシコ湾を航行して南米諸国を訪問する予定だと発表した。イランの半国営タスニム通信社が報じた。この大航海は、イラン軍のプレゼンスを世界に広げ、イランを孤立化させようと画策するアメリカとその同盟国イスラエルとサウジアラビアに対抗できる関係を諸外国と築こうとする戦略の一環と報道されている。

「ヨーロッパと南北アメリカ大陸の間の公海を行き来することこそ、イラン海軍の目標だ」と、11月初めのカンザニの就任式で、前任のハビボラ・サヤリはこう言ったという。

カンザディはイラン海軍が新たな軍艦や潜水艦を2018年に導入することを宣言。11月の最終週には、新型のペイカン級ミサイル・コルベット艦「セパル」を同国のカスピ海艦隊に追加配備するなど、矢継ぎ早の海軍増強計画を明らかにした。イラン南部マクラン海岸沿いのジャスク港では、海軍飛行場の建設計画が進行中とも報じられた。

対イラン包囲網をはね返す

ホメイニ師を中心とするシーア派イスラム教勢力が、アメリカの傀儡だったパーレビ王朝を倒した1979年のイラン革命以降、アメリカとイランは敵対している。アメリカは数十年にわたりイスラム教スンニ派の盟主サウジアラビアを支持し、なんとかイランの影響力拡大を抑えようとしてきた。イランとサウジは中東一帯で互いに対立する政治勢力や軍事運動を支援し、対立がさらに悪化した。最近になって中東でのイランの影響力がサウジアラビアを上回るようになるにつれ、それを阻止したいイスラエルはかつての敵であるサウジアラビアに接近してまで対イランで連携している。

【参考記事】中東を制するのはサウジではなくイラン

イスラエルとサウジアラビアを支持するトランプは、バラク・オバマ前米大統領が交渉し、米欧など主要6カ国が2015年に結んだイランとの核合意をイランが順守していると認めず、破棄すると警告している。アメリカとイランの強硬な保守派の反対を押し切って成立した核合意は、対イラン経済制裁で欧米が課した数十億ドルの経済制裁の解除と引き換えに、イランが核兵器の開発を凍結するというもの。イランは核合意を順守していると認めるアメリカの同盟国や国際機関の激しい批判にも関わらず、トランプは核合意を破棄または再交渉するか否かの判断を米議会に委ねる方針だが、イランは再交渉の余地はないとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G20首脳会議が開幕、米国抜きで首脳宣言採択 トラ

ワールド

アングル:富の世襲続くイタリア、低い相続税が「特権

ワールド

アングル:石炭依存の東南アジア、長期電力購入契約が

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中