最新記事

エネルギー

モンゴル国境が大渋滞 北朝鮮産を穴埋めする中国向け石炭ラッシュ

2017年11月21日(火)21時00分

日没時、モンゴルの国境近くで渋滞するトラックの車列。10月29日撮影(2017年 ロイター/B. Rentsendorj)

モンゴルのゴビ砂漠で、石炭を満載した数千台もの大型トラックが、中国国境に向かう渋滞した道路をのろのろと進んでいる。中国まで1週間かかることもある。

トラックの運転手たちは、石炭のほこりまみれのトラックの上で食事を作り、食べ、眠る。8世紀以上も前にチンギス・ハンの大軍の胃袋を満たしたものと同じ肉のスープを食べ続けている人も多い。

トラックの列沿いに、たばこや水、ディーゼル燃料を売って歩く人たちが活発に商売をするようになった。中国の税関通過待ちのトラックの列の長さは、130キロに達することもある。

石炭価格の回復と中国向け輸出増加のおかげで、モンゴルの炭鉱は今年大儲けした。通貨・債務危機により、国際通貨基金(IMF)の支援を必要とする事態に追い込まれたモンゴルの小さな経済にとっても、石炭は生命線となっている。

だが、両国間の主要な国境検問所であるモンゴル側のガシュンシュハイトと中国のガンツモッドでは、検問通過に長時間の遅れが生じており、こうした恩恵を損ねている。これによりゴビ砂漠の炭鉱から中国に石炭を運ぶトラックによる長蛇の列ができている。

通関の遅れは、石炭貿易の急成長による交通量の増加に原因があるとされている。だが、モンゴル当局が多発する石炭の密輸を止めることができずにいるため、中国側がここ数カ月、検問での審査を強化していることも事態を悪化している。

中国の内モンゴル自治区の通関担当者は、コメントの求めに応じなかった。北京の中国税関総署は、取材に応じなかった。

回復も頭打ちに

地元警察によると、今年の石炭価格上昇を受けて国境の交通量は倍増。中国とモンゴルの双方で、警察や税関のスタッフに大きな負荷がかかっている。

ゴビ砂漠の炭鉱は、中国での石炭価格上昇に乗じて利益を得ようと来年は増産を計画しているため、国境のボトルネックはさらに悪化しそうだ。

中国では、環境規制の強化により数百カ所の炭鉱が閉山したほか、小さな港での石炭の荷揚げが規制されため、石炭価格が上昇している。

北朝鮮の核実験に対して国連が経済制裁を強化し、中国が北朝鮮からの石炭輸入を減らしたことも、モンゴルがその穴埋めに入る好機を生んだ。

モンゴルの中国向け石炭輸出は、今年上半期に4倍以上に膨らんだ。だが通関の遅れが発生した7月以降、その伸びは頭打ちとなっている。

ガシュンシュハイトのモンゴル側の通関責任者、バター・ダワースレン氏は、両国とも通関の人員が不足していると説明する。10月に北京で行われた中国共産党大会のようなイベントも、状況を悪化させたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

赤沢再生相、ラトニック米商務長官と3日と5日に電話

ワールド

OPECプラス有志国、増産拡大 8月54.8万バレ

ワールド

OPECプラス有志国、8月増産拡大を検討へ 日量5

ワールド

トランプ氏、ウクライナ防衛に「パトリオットミサイル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    反省の色なし...ライブ中に女性客が乱入、演奏中止に…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中