最新記事

トランプ政権

ロシア疑惑で初起訴 モラー特別検察官がトランプに示した「本気度」

2017年11月1日(水)16時42分

10月30日、今回の起訴は、ホワイトハウスやトランプ氏の側近らに、明確な意図を伝えた。モラー連邦特別検察官(写真)は本気だ、ということだ。ワシントンで6月撮影(2017年 ロイター/Joshua Roberts)

トランプ米大統領は、ロシアによる大統領選干渉疑惑と自身の選挙陣営との関連に絡む捜査で行われた初の起訴を一蹴した。だが今回の起訴は、ホワイトハウスやトランプ氏の側近らに、明確な意図を伝えた。モラー連邦特別検察官は本気だ、ということだ。

検察側は、トランプ陣営のポール・マナフォート元選挙対策本部長とリック・ゲーツ元代理人をマネーロンダリング(資金洗浄)などの罪状で起訴し、別の選挙顧問から罪を認める供述を確保。モラー検察官はこれにより、犯罪行為を捜査するため過去に深く切り込み、与えられた広範な捜査権限を積極的に行使する意思を明確にした。

ホワイトハウスは表向きには、一連の起訴は大統領やその選挙陣営には無関係だと表明したが、トランプ氏の側近の中には、モラー氏が次に何を、そして誰を狙うのか心配している人もいる。

「検察は、この捜査で関係者に接触する時にはその力を誇示し、本気だということを相手に知らしめている」と、元連邦検察官のパトリック・コター氏は言う。「だからもし検察から接触されたら、ちゃんと事情を説明した方がいい。マナフォートはそうしなかったから、今回のような事態になった」

マナフォートとゲーツの両被告は、マネーロンダリングのほか、脱税や米国に対する謀略などの罪で起訴された。2人は30日、罪状を否認した。

罪状を詳細に列挙した今回の起訴は、モラー氏による「先制の一撃」のように見える。

モラー氏は、2016年の米大統領選でのトランプ陣営とロシアの癒着の可能性を捜査していた連邦捜査局(FBI)のコミー長官がトランプ氏に解任されたことを受け、ローゼンスタイン副司法長官から特別捜査官に任命された。

モラー氏は、癒着疑惑のほか、「捜査の過程で浮かび上がるいかなる事案」についてでも、捜査をする権限が与えられている。

トランプ氏は、ロシア側との癒着を一切否定し、一連の捜査は「でっち上げ」で「魔女狩り」だとたびたび批判している。ロシア側も、2016年の大統領選への干渉を否定している。

30日に行われた初の起訴で、モラー氏は捜査権限を恐れず行使することを示した。そしてトランプ政権の幹部も、そう受け止めた。

「より大きな見地から心配しているのは、ローゼンスタイン司法副長官がモラー氏にここまで大きな権限を与えたことで、モンスターが生まれたことだ」と、元ホワイトハウス高官は語った。

トランプ陣営の元アドバイザーは、捜査が結果的に、トランプ氏のビジネスに抵触することへの懸念を表明した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは156円前半でほぼ横ばい、日銀早期

ビジネス

中国万科の社債急落、政府支援巡り懸念再燃 上場債売

ワールド

台湾が国防費400億ドル増額へ、33年までに 防衛

ビジネス

インフレ基調指標、10月の刈り込み平均値は前年比2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中