最新記事

中東

OPEC結束に乱れ、サウジとカタール巡る対立の影響広がる

2017年11月27日(月)09時15分

11月23日、石油輸出国機構(OPEC)は、中核を成す中東湾岸諸国の結束が急速に崩れつつある。ウィーンで開かれたOPEC関連会議で9月撮影(2017年 ロイター/Leonhard Foeger)

石油輸出国機構(OPEC)は、中核を成す中東湾岸諸国の結束が急速に崩れつつある。盟主サウジアラビアとカタールの対立が深刻化するなど反目が広がって意思の疎通にも支障が生じており、今後の政策決定に影響が及びそうだ。

OPECは来週30日にウィーで総会を開く。しかし複数のOPEC筋によると、湾岸諸国はサウジ・カタール問題のせいで、通例となっている非公式の事前協議を今回は見送った。

あるOPEC高官は「(対話アプリの)ワッツアップには、湾岸諸国の石油相と代表全員が入るチャットルームがあった。以前は盛況だったが、もう閉鎖されてしまった」と話した。

他の4人のOPEC筋によると、サウジやアラブ首長国連邦(UAE)などOPECの主要産油国が参加する湾岸協力会議(GCC)では、石油政策について公式の打ち合わせが行われていない。

サウジとUAEは6月、テロを支援し、イラン寄りだなどとしてカタールと断交した。

別のOPEC筋によると、サウジとUAEの石油相はカタールの石油相と公式には会うことができず、この問題で中立的な立場を取っているクウェートやオマーンの石油相を通じてカタールにメッセージを伝えているという。

台頭するシーア派

OPECは1980年代のイラン・イラク戦争や1990年のイラクによるクウェート侵攻など、もっと大きな危機を切り抜け、もっと深刻な対立下でも運営を行ってきた。

今回の総会でも加盟国は減産継続で意見が一致しており、減産期間の2018年末までの延長で合意するとのシナリオが覆ることはないとみられている。

ただ、OPECの中核国が油価安定に向けて統一戦線を形成できていないため、加盟国間の対話は難しくなりそうだ。この結果、OPEC内部でサウジなどイスラム教スンニ派連合が弱体化する可能性もある。折しもシーア派が支配的なイランやイラクは力を蓄えている。

先のOPEC高官は「GCCが政治的に崩壊すれば、OPECの政策に影響が波及するのは間違いない。政策判断ができなくなることはないだろうが、より難しくなる」と述べた。

その上で「スンニ派のカタールが同じ宗派のサウジやUAEと会話をしなくなり、OPEC内ではスンニ派の勢力が弱まっている。一方、(シーア派である)イランとイラクは連携を強めている」と指摘した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

G7外相、イスラエルとイランの対立拡大回避に努力=

ワールド

G7外相、ロシア凍結資産活用へ検討継続 ウクライナ

ビジネス

日銀4月会合、物価見通し引き上げへ 政策金利は据え

ワールド

アラスカでの石油・ガス開発、バイデン政権が制限 地
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 6

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 9

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 10

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中