最新記事

オピニオン

北朝鮮危機「アメリカには安倍晋三が必要だ」

2017年10月23日(月)20時30分
ジェフリー・ホーナン(米ランド研究所、政治学)

安倍はアメリカにとって理想の指導者で過去数十年で最も有能な首相? Kevin Lamarque-REUTERS

<衆院解散前、束の間「希望の党」が躍進しそうに見えた刹那、アメリカにとっていかに安倍晋三が貴重か気づいた、と筆者は書く>

10月22日の日本の総選挙は、アメリカ人があまり意識したことのない真実をあぶり出した。アメリカとドナルド・トランプ米大統領が北朝鮮や中国に対抗するためには、日本の安倍晋三首相が必要だ、ということだ。

カリスマ性のある東京都知事・小池百合子が「打倒・安倍政権」をキャッチフレーズに「希望の党」を立ち上げた後、束の間とはいえ安倍の自由民主党が不利に思えた時期があった。日本が、過去数十年で最も有能な首相を失いそうに見えたのだ。さらに悪いことに、小池は総理の座を目指さないと明言し、万一安倍が敗れたら、誰が次期首相になるのかさえわからない状態だった。

重大な事実が明らかになったのはその時だ。アメリカは、北朝鮮の核・ミサイル問題や中国の拡張主義はもちろん、テロや自然災害まで、東アジアの安全保障上の脅威に対処する上で、安倍という強力なパートナーに頼ることにいつの間にか慣れ切っていたのだ。

これらの大きな脅威に、アメリカは一国で立ち向かうことはできない。勝利のためには、前進基地を作り同盟国からの支援を受けることが不可欠だ。日本はその両方をしている。日本には世界中のどの地域よりも多い5万人近い米兵が駐留しているのだ。

在日米軍には、米第七艦隊、その空母打撃群、海兵隊第3遠征軍、そして戦闘航空団を含む相当規模の空軍が含まれる。日本政府は、これだけの部隊を維持するための「在日米軍駐留経費」も年間約20億ドル負担している。

過去にない緊密さ

安倍がアメリカの戦略目標の強い支持者で、常に日本の経済的・外交的な影響力を割いて協力してくれることも重要だ。日本の自衛隊と米軍との相互運用もうまくいっている。

日米同盟に反対する声はいずれの国にも少ないが、安倍はそのつながりを前例がないレベルまで強化した。新たな法律や政治の枠組みを作ることで、安全保障で日本がより積極的な役割を担えるようにした。

2012年に首相に就任して以降のわずか5年で国家安全保障戦略を作り、武器輸出3原則を緩和し、10年間減り続けていた防衛予算を増やした。海洋における国際法遵守を積極的に訴え、オーストラリア、インド、ベトナム、フィリピンなどと安全保障協力の関係を築いた。日米同盟の関係において、自衛隊の役割と機能も拡大した。

さらに、日本国憲法の解釈を変更して自衛隊が集団的自衛権を行使できるようにした。これによって日本は、地域覇権を狙う中国を牽制する位置づけになり、有事の際には重要な役割を果たすことができるようになった。また安倍は前任者たちと違い、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設先を県外や国外にするのではなく、同じ沖縄県の名護市辺野古に新基地を建設することを強く支持してきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英金融市場がトリプル安、所得税率引き上げ断念との報

ワールド

ロシア黒海の主要港にウの無人機攻撃、石油輸出停止

ワールド

ウクライナ、国産長距離ミサイルでロシア領内攻撃 成

ビジネス

香港GDP、第3四半期改定+3.8%を確認 25年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 5
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 6
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 7
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 10
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中