最新記事

兵器

北朝鮮が自賛する「国産」CNC加工装置、兵器開発の立役者に

2017年10月17日(火)08時54分

大量生産

北朝鮮政府は国産CNC装置について、自主性を唱える主体(チュチェ)思想の勝利とたたえたが、厳密にはそれは正しくない。

2016年8月、国営メディアは、スイスの重電大手ABBのロゴが入ったCNC装置を使用する工場を視察する正恩氏の写真を配信した。世界のCNC市場において、ABBは最大手の1つである。同社の装置がいつ、どのように北朝鮮に渡ったのかは定かではない。

ABBは、同社が北朝鮮に対する貿易制裁を全面的に順守しており、自社の装置が同国に渡らないようにしているとしたうえで、「それでも、自社製品の一部がわれわれのあずかり知らぬところで許可なく北朝鮮に転売されていた可能性は排除できない」と、ロイターの問い合わせに回答した。

国連安保理の北朝鮮制裁委員会が今年発表した報告書によると、中国の「滕州市科永達數控機床有限公司」が、北朝鮮の新たなCNCサプライヤーとなっていた。同社の営業担当者はロイターに対し、北朝鮮への販売は4年前に中止しており、現在は取引関係にないと述べた。

制裁下にあるにもかかわらず、CNC装置は北朝鮮内の製造拠点の至るところにあり、中国やロシア経由で持ち込まれた可能性があると、韓国科学技術政策研究院の李春根(イ・チュングン)先任研究委員は指摘する。

最大の抜け道は、一部のCNC装置は軍民両用で利用できる機能があるため禁止されているものの、大半の装置は民需産業で利用できることだ。

「軍民両用が可能であることを考えると、他の目的で装置を輸入し、それを分解して利用することも可能だろう」との見方を李氏は示した。

CNCの歌はこのことを出だしのフレーズで強調している。

「それが何であろうと、全力で取り組めば、作れるプログラムはある」

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

James Pearson and Hyonhee Shin

[ソウル 12日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

景気一致指数 4月0.3ポイント低下、先行指数はコ

ビジネス

米累積債務と財政赤字は「時限爆弾」、シタデル証券社

ワールド

豪首相、防疫対策の緩和否定 対米関税交渉巡り

ビジネス

米ロビンフッド幹部、個人投資家が株式急落後の回復の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット騒然の「食パン座り」
  • 3
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪んだ認知
  • 4
    壁に「巨大な穴」が...ペットカメラが記録した「犯行…
  • 5
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 6
    女性が愛馬に「後輩ペット」を紹介...亀を見た馬の「…
  • 7
    韓国新大統領にイ・ジェミョンが就任 初日の執務室で…
  • 8
    脳内スイッチを入れる「ドーパミン習慣」とは?...「…
  • 9
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 10
    ガザに向かうグレタ・トゥーンベリの支援船から救難…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 4
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 5
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 6
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 7
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び…
  • 8
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 9
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 10
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 9
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中