最新記事

ミャンマー

スーチー崇拝が鈍らせるロヒンギャ難民への対応

2017年9月30日(土)14時30分
ジョシュア・キーティング

そのスーチーが今回の問題について、ロヒンギャ迫害という指摘は「偽情報の巨大な氷山の一角」(つまりフェイクニュース)だと非難している。これは欧米諸国にとって、あまりに大きな失望だ。

可能性は低いが、ノーベル平和賞を取り消すべきだという声もある。だが本当に懸念すべきなのは、1人の指導者の功績や、その人物に賞を与えたノーベル委員会の信頼性ではない。スーチーに対する個人崇拝が、各国の対応の遅れにつながっているかもしれない点だ。

スーチーの例は、世界の指導者を「英雄」と「悪人」に簡単に分けることの危険性を示す教訓となるべきだ。

欧米諸国の指導者とだまされやすいジャーナリストたちは、メディア受けする経歴を持つ指導者については独裁や腐敗を許しがちな一方で、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)のような指導者はとんでもない悪人に仕立て上げる。こうした視点は、危機を解決する上であまり有効ではない。

大半の政治指導者は、自国の状況に照らし、自分や有権者の利益を考えて行動するものだ。1人の女性指導者が国内の多数派を強く擁護すると同時に、迫害を受ける少数派に対する多数派の姿勢を共有しても、驚くには当たらない。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

© 2017, Slate

[2017年10月 3日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トヨタ、中国生産30年に60万台以上積み増し、現地

ビジネス

中国10月CPI、前年比+0.3% 4カ月ぶりの低

ワールド

トランプ氏刑事手続き、連邦地裁が延期認める 議会襲

ワールド

米司法省、トランプ氏暗殺計画巡りイラン在住の男起訴
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米大統領選と日本経済
特集:米大統領選と日本経済
2024年11月 5日/2024年11月12日号(10/29発売)

トランプ vs ハリスの結果次第で日本の金利・為替・景気はここまで変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「遮熱・断熱効果が10年持続」 窓ガラス用「次世代型省エネコーティング」で地球規模の省電力を目指すビルズアート
  • 2
    「歌声が聞こえない」...ライブを台無しにする絶叫ファンはK-POPの「掛け声」に学べ
  • 3
    ウクライナ軍ドローン、1000キロ離れたロシア拠点に突っ込む瞬間映像...カスピ海で初の攻撃
  • 4
    ハリス氏惨敗の背景に「アメリカ中流階級の生活苦の…
  • 5
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 6
    小児性愛者エプスタイン、23歳の女性は「自分には年…
  • 7
    ネアンデルタール人「絶滅」の理由「2集団が互いに無…
  • 8
    世界中で「キモノ」が巻き起こしたセンセーション...…
  • 9
    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはど…
  • 1
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウクライナ軍と北朝鮮兵が初交戦
  • 2
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大人気」の動物、フィンランドで撮影に成功
  • 3
    予算オーバー、目的地に届かず中断...イギリス高速鉄道計画が迷走中
  • 4
    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…
  • 5
    「歌声が聞こえない」...ライブを台無しにする絶叫フ…
  • 6
    「トイレにヘビ!」家の便器から現れた侵入者、その…
  • 7
    「遮熱・断熱効果が10年持続」 窓ガラス用「次世代…
  • 8
    「ダンスする銀河」「宙に浮かぶ魔女の横顔」NASAが…
  • 9
    後ろの女性がやたらと近い...投票の列に並ぶ男性を困…
  • 10
    投票日直前、トランプの選挙集会に異変! 聴衆が激…
  • 1
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 2
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 3
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の北朝鮮兵による「ブリヤート特別大隊」を待つ激戦地
  • 4
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 5
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 8
    予算オーバー、目的地に届かず中断...イギリス高速鉄…
  • 9
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 10
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中