最新記事

北朝鮮追加制裁

失敗し続けるアメリカの戦略――真実から逃げているツケ

2017年9月12日(火)15時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

手を貸したのは日本

話はシンプルだった。

たとえば1991年12月に共産主義国家の砦であったソ連が崩壊した時に、米軍が韓国から引き揚げるチャンスはあったはずだ。そのとき中国は1989年6月4日の天安門事件で西側諸国からの経済封鎖を受け、政治的にも経済的にも不安定で壊滅状態だった。ベルリンの壁も崩壊して、共産圏の力は危険水域に達していた。

経済封鎖を続けていれば、中国はこれで崩壊しただろう。一党支配体制が瓦解する最大のチャンスだった。

それを阻止して中国を助けたのは、ほかでもない、わが日本である。

率先して経済封鎖を解き、天皇陛下訪中まで果たして江沢民を喜ばせた。江沢民の計算通り、西側諸国は日本に足並みを揃えて経済封鎖を解除。日米が競うように中国を経済支援した。

こうしてビクとも動かない経済強国、中国ができ上がり、日本に歴史カードを突き付け、北朝鮮に関しては肝心なところで「これまでにない最強の制裁」を取り崩している。

日本政府はアメリカに対する、そして一部のメディアは日本政府に対する「忖度」から、何も言わない。敗戦国日本の哀しさを、今もひきずっている。

国連安保理やアメリカを褒めたり、北朝鮮の核やミサイル技術がどこまで行っているかとか、日本がやられるかとか、末端の部分の議論に焦点を当てて燃え上がり、問題の根源が見えないようにしている。目つぶしを食らわしているのだ。

これによって得をするのは誰なのか――?

こんなことで、本当に日本国民の安全を守れるとでも思っているのか――?

日本政府と一部のメディアの良心に問いたい。

(これらの詳細は『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』の第3章に書いた。)

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三菱商事、今期26%減益見込む LNGの価格下落な

ワールド

インド4月自動車販売、大手4社まだら模様 景気減速

ワールド

米、中国・香港からの小口輸入品免税撤廃 混乱懸念も

ワールド

アングル:米とウクライナの資源協定、収益化は10年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 5
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 6
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中